研究課題/領域番号 |
22K08872
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
横山 雄起 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60615714)
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研究分担者 |
山本 浩文 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30322184)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | リンチ症候群 / 大腸癌 / 三次元ゲノム構造 |
研究実績の概要 |
リンチ症候群関連大腸癌は全大腸癌の2-4%を占めると推定されており、散発性の大腸癌に比べて低分化腺癌や粘液癌・印環細胞癌が多いなど、特徴的な臨床像を示すが、なぜそのような特徴を有するのかについては明らかとなっていない。核内における三次元ゲノム構造が組織特異的な遺伝子発現やlineage-specificな遺伝子発現などを厳密に制御していることが明らかとなってきており、注目を浴びている。我々は三次元ゲノム構造解析技術であるin vitro engineered DNA-binding molecule-mediated chromatin immunoprecipitation sequencing (in vitro enChIP-Seq) 法を用いて、大腸癌細胞株において上皮性細胞接着分子であるEpCAM遺伝子のプロモーター領域がリンチ症候群関連遺伝子であるMSH2遺伝子と三次元的に結合していることを示唆するデータを得た。そこで本研究では、リンチ症候群関連大腸癌の病態に関与する三次元ゲノム構造について、細胞株、臨床サンプルを用いた実験によって明らかにすることを目的とする。初年度の研究ではCRISPR/Cas9システムを応用し、guide RNA依存的に標的領域を活性化、抑制化できるCRISPRa, CRISPRi実験を行い、その結果大腸癌細胞株において、EpCAM遺伝子のプロモーター領域を活性化ないしは抑制化すると、それに連動してMSH2遺伝子の発現も増加ないし低下することを明らかにした。本年度はMSH2遺伝子のプロモーター領域を活性化ないしは抑制化するためのプラスミドを作製し、大腸癌細胞株を用いて前年度同様の実験を行った。その結果、MSH2遺伝子のプロモーター領域を活性化ないしは抑制化した場合においても、それに連動してEpCAM遺伝子の発現が増加ないし低下した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の計画通り、本年度はEpCAM遺伝子プロモーター領域と三次元的に結合しているMSH2遺伝子を標的として、CRISPRa, CRISPRi実験を行い、MSH2遺伝子のプロモーター領域を活性化ないしは抑制化した場合においても、EpCAM遺伝子の発現が連動して変化することを明らかにできた。この結果は、EpCAM遺伝子とMSH2遺伝子の間で形成される三次元ゲノム構造が両遺伝子の協調的な発現調節に関わっていることをより強く示唆するものである。また、本年度は大腸癌組織の臨床サンプルを用いたEpCAMとMSH2の免疫染色にも着手した。さらにCRISPR/Cas9システムを用いて三次元的に結合している領域を欠失させた変異体の作製やMSH2遺伝子のプロモーター領域を標的としたin vitro enChIP-Seq実験の準備も進めている。以上の通り、本年は計画していた研究が順調に進捗し、次年度へ向けた準備も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は免疫染色の症例数を増やし、臨床サンプルにおいてEpCAMとMSH2の発現レベルに相関があるのかなど臨床病理学的な解析を進めていく。さらにCRISPR/Cas9システムを用いて三次元的に結合している領域を欠失させた変異体の作製やMSH2遺伝子のプロモーター領域を標的としたin vitro enChIP-Seq実験を行うことによって、EpCAM遺伝子とMSH2遺伝子の間で構築される三次元ゲノム構造による協調的な発現制御メカニズムについてより詳細に検討を行っていく。
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