研究課題/領域番号 |
22K08876
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
安井 潔 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (50372777)
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研究分担者 |
池田 裕明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (40374673)
金高 賢悟 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (10549570)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | T細胞 / MHC / 移植医療 |
研究実績の概要 |
細胞に新たな治療機能を搭載し、疾患の原因制御を目指す、「デザイナー細胞」医薬品の開発が大きく注目されている。移植治療にデザイナー細胞を用いる際の大きな課題として、拒絶反応を回避するための免疫抑制剤による重篤な副作用がある。そのため、拒絶反応を回避しうる移植用デザイナー細胞の開発は極めて重要な課題である。本研究では、T細胞や筋芽細胞、肝細胞等を用いて MHC Class I、II分子、HLA-E、CD47 の発現調節を行い、 他家のCD4+T細胞やCD8+T細胞、NK細胞、貪食細胞からの免疫逃避が可能であるかの検討を行うとともに、組織・臓器に特異的な機能修飾を統合して有効な移植用デザイナー細胞の開発を目指すことを本研究の目的としている。
2022年度には、以下の研究実績が達成された。 (1)T細胞、筋芽細胞、肺細胞においてMHC Class Iのノックアウトを行うとともに、それらの細胞が他家CD8+T細胞による攻撃を回避できることを示した。(2)HLA-Eの発現により他家NK細胞の攻撃を回避できることを示した。(3)CD47の強発現、およびKOした細胞株を作製するとともに、ヒト血液より貪食細胞を分化培養し、貪食作用におけるCD47の影響を調べることのできる系を開発した。以上の結果より、細胞の免疫関連因子の発現を人為的に調節し、拒絶反応を回避しうる細胞を作製できる可能性を示した。また、それらを評価するための端緒としてまず、(4)重度免疫不全NOGマウスにT細胞を輸注する系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
拒絶反応を回避でき得る因子としてMHC Class I、II分子、HLA-E、CD47に着目し、それらの発現調節を行なった細胞株を作製し、in vitroにおけるアッセイ系に関しても確立を行った。以上より、in vitroにおけるデザイナー細胞の拒絶反応回避の評価を行う準備が整ったと考えられる。
また、NOGマウスにヒトT細胞を輸注し、正常に機能することを示すことができた。今後、ヒト化マウスを用いる準備の一端となったと思われる。
以上の進捗状況により、概ね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)In vitroにおけるアッセイ系をさらに拡充し、各因子と拒絶反応の関係について評価する。 (2)ヒト化マウス等を用いたin vivo系の構築。 (3)各種細胞特異的な機能の解析(臓器特異的酵素発現など)。
以上の3点を中心に今後の研究を推進し、有効な移植用デザイナー細胞の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画的に使用したが、(1)進捗状況より、動物実験に比べ、細胞培養やin vitro実験の割合が増えた。(2)試薬等の割引、コロナウイルスの影響による納品の遅延。の理由より次年度使用額が生じた。
次年度に繰り越した経費は主にマウスの購入費に充てる予定である。
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