研究課題
昨年度GIST細胞のKITのゴルジ停留にProtein Kinase D2(PKD2)とその下流キナーゼの活性化が必要なことを明らかにした。本年度はKIT阻害剤イマチニブ (GIST治療薬) 耐性GISTについて、GIST細胞株とモデルマウスを用い検討した。イマチニブ耐性KIT変異を有するGIST細胞株 (GIST-R9, GIST430) でも、感受性株と同様に、PKD2阻害により変異KITのゴルジ領域停滞が阻害され、細胞増殖シグナルが抑えられた。PKD2阻害でゴルジを離れた耐性型KITは、リソソームに移動して分解さた。この結果は、PKD2阻害剤がイマチニブ耐性GISTに対しても治療効果を持つ可能性を示唆する。初発GIST 83例の臨床症例を対象に、抗KITと抗PKD2抗体を用い、KITとPKD2の発現と両者の細胞内局在を評価し、臨床病理学的因子や予後との関連性を検討した。PKD2高発現群は43例、PKD2低発現群は40例で、KIT遺伝子変異の有無とPKD2発現が関連した。その他の臨床病理学的背景因子(年齢・性別・原発部位・核分裂像数)や予後とは関連を認めなかった。イマチニブ耐性型KIT変異をgermlineに持つノックインマウスと家族性GISTの臨床検体(共にパラフィンと凍結)を用い発現解析計画しており、本年度は、そのための予備検討をおこなった。ノックインマウスで盲腸に形成されたGIST様腫瘍の凍結切片の免疫蛍光染色を行った。KITもリン酸化KITもGM130 (ゴルジマーカー, ゴルジマーカー) と近い位置に検出され、ヒトGIST細胞株と一致した結果を得た。次年度に、これに加えヒトのsporadic GIST、家族性GISTを含め、PKD2とKITのゴルジ局在およびそのリン酸化を確認し、変異KITが消化管にのみ腫瘍化を起こす要因を検討する
2: おおむね順調に進展している
前年度までの結果に加え、イマチニブ耐性GISTにおける実験結果と臨床データを追加することができた。KITのゴルジ停留へのPKD2の関与については、KITのイマチニブへの感受性に左右されないことを明らかにした。また、細胞株のみではなくノックインマウスでの検討ができるようになり、ヒトのGISTの臨床検体(パラフィンブロックと凍結検体)での検討のセットアップができたことから、「概ね順調に進展している」 とした。
ノックインマウス, ヒトのsporadic GISTと家族性GISTの臨床検体を用い、切片の免疫蛍光染色と生化学的解析を試みる。また、細胞株で扱えなかった、PDGFRA変異GISTやチロシンキナーゼに変異を有さないGISTについても、PKD2の発現レベルおよびリン酸化を確認し,腫瘍化にPDK2活性化がどの様に関与しているか明らかにする予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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