研究課題/領域番号 |
22K08889
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
森中 孝至 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (70895854)
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研究分担者 |
高野 重紹 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (20436380)
久保木 知 千葉大学, 大学院医学研究院, 講師 (50571410)
酒井 望 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (70436385)
三島 敬 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (70802560)
大塚 将之 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (90334185)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | RYBP / 大腸癌 / p53 |
研究実績の概要 |
今年度は当教室で切除した大腸癌肝転移巣122例に対してRYBPの免疫染色を行い、発現傾向、臨床病理学的因子、予後との関係を評価した。さらに2012年から2014年までに当院で外科的切除した大腸癌原発巣140例に対しても同様の評価を行った。大腸癌原発巣では腫瘍細胞の核内での発現を認め、RYBP低発現群では遠隔転移、術後再発が有意に高い結果となった。さらにRYBP低発現は癌特異的生存率、無病生存率を有意に短縮する結果となった。 肝転移巣での評価では核内発現はほとんどの症例で観察されなかった。またapoptosisとの関連を評価するためp53の免疫染色を行いTP53遺伝子野生型、変異型に分類した。するとTP53野生型の群ではRYBP低発現は有意に予後不良であるのに対し、TP53変異型群ではその有意性は認めなかった。それらの結果からRYBPと野生型p53の関連が示唆され、細胞実験にてその詳細を評価することとした。 当教室で保有する大腸癌細胞株のうち、TP53野生型であるHCT116、SW48、TP53変異型であるDLD-1、TP53をノックアウトしたHCT116(TP53-/-)の細胞株を用いて評価、解析を始めた。 RYBP-p53の関係を評価するため、それぞれの細胞株に対してsiRNAを用いRYBPをノックダウンし、ウエスタンブロットにて蛋白量を評価すると、TP53野生型の細胞株でのみ、RYBPをノックダウンすると有意にp53の蛋白量が低下することが確認できた。さらにproliferation assayを行うと、TP53野生型細胞株でのみRYBPのノックダウンにより腫瘍増殖能が促進されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度から2023年度にかけて臨床検体を用いた検討、大腸癌細胞株を用いたin vitro研究を予定していた. 当初切除標本の癌部、非癌部からwhole tissue lysate・nuclear extract・mRNAなどを抽出し評価を行うことも検討していたが、vitroでの結果を踏まえて今後追加する方針としている。 vitroにおいてはRYBP高発現の大腸癌細胞株SW48,DLD1を用いて機能解析を行う予定としていたが、一律した結果が得られなかったことから、考察しTP53 statusに着目した。TP53野生型細胞株では一律して癌抑制的な働きを観察することができ、現在vitro実験を進めているところである。また平行してplasmidDNAのtranfectionによりRYBPのoverexpressionを行い2方向からRYBPの機能評価を行っている。 よって進捗状況としてはおおむね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
p53を介したRYBPの腫瘍抑制的なメカニズムを評価するため、RYBPをknockdown、overexpressionした細胞株に対し細胞周期アッセイやapoptosis assay等を行う。さらにp53下流因子との関係を評価するため、cyclinD1、cyclinEを代表とする細胞周期関連分子, BAXやcleaved caspase3,9の動きをウエスタンブロットにて評価する。 また臨床検体での評価から、RYBP低発現が遠隔転移、術後再発に寄与してることが分かったため、stemness propertyやanoikisの関係も検討が必要と考える。
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