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2023 年度 実施状況報告書

免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍作用に対する抗ヒスタミン薬の増強効果

研究課題

研究課題/領域番号 22K08902
研究機関昭和大学

研究代表者

倉増 敦朗  昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (90302091)

研究分担者 吉村 清  昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30346564)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードヒスタミン / ヒスタミンH1受容体 / 抗ヒスタミン薬 / 免疫チェックポイント阻害薬 / PD-1 / 抗PD-1抗体
研究実績の概要

近年注目されている免疫チェックポイント阻害薬は、宿主の免疫細胞機能を抑制するシグナル伝達を阻害することにより抗腫瘍効果を示すが、奏効率が低いという課題がある。公開がんゲノムデータベースより得たデータを用いて、ヒスタミンH1受容体高発現群とヒスタミンH1受容体低発現群で、RNAシークエンスデータを比較したところ、H1受容体低発現群では、腫瘍浸潤リンパ球が多いことが予想された。H1受容体拮抗薬はH1受容体低発現量を低下させるので、免疫チェックポイント阻害薬の併用が治療効果を向上させる可能性があると考えた。本研究は、抗アレルギー薬として広く用いられているヒスタミンH1受容体拮抗薬が、免疫チェックポイント阻害薬の効果を増強する可能性について検討する。
本年度は、マウス乳がん細胞4T1皮下移植モデルを用いて、抗PD-1抗体単独治療群と抗PD-1抗体とH1受容体拮抗薬セチリジンの併用治療群を比較した。4T1はトリプルネガティブ乳がん細胞であり、散発性に肺や骨など遠隔臓器に転移する。本モデルマウスでは、抗PD-1抗体療法に対してセチリジンの併用で肺転移による死亡率が33%減少し、原発巣に対する腫瘍増大抑制作用を認めた。また、同モデルでは骨への転移も認められ、セチリジンと抗PD-1抗体併用群では対照群に比較して骨量の減少が有意に抑制された。一方、尾静脈から腫瘍細胞を注入する肺転移モデルでは、群間で生存率に差は認められなかった。この結果は、がん細胞の浸潤転移能に抗ヒスタミン薬が影響する可能性を示唆する。さらにIn vitroでは、ヒト乳がん由来線維芽細胞 (CAF) において、セチリジンは、いくつかの細胞外マトリックス(ECM)関連遺伝子発現を濃度依存的に減少させた。セチリジンの作用機序として、CAFからのECM産生の抑制が関与している可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

マウス乳がんモデルを用いた解析で、抗ヒスタミン薬と抗PD-1抗体の併用による治療効果増強を確認することができた。予定通りの成果が、得られている。今後は、機序の解明を行う。

今後の研究の推進方策

セチリジンが抗PD-1抗体の効果を増強する作用が、H1受容体によるものであることを別の抗ヒスタミン薬を用いて検討する。また、H1受容体ノックアウトマウスを用いて、同様に検討する。

次年度使用額が生じた理由

購入した抗体が想定価格より安かったため次年度使用額が生じた。次年度に細胞培養試薬購入のために使用し、それ以外の使用計画に大きな変更はない。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Butyricimonas is a key gut microbiome component for predicting postoperative recurrence of esophageal cancer2024

    • 著者名/発表者名
      Otsuka Koji、Isobe Junya、Kuramasu Atsuo、他
    • 雑誌名

      Cancer Immunology, Immunotherapy

      巻: 73 ページ: 23

    • DOI

      10.1007/s00262-023-03608-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Nivolumab receptor occupancy on effector regulatory T cells predicts clinical benefit2024

    • 著者名/発表者名
      Hosonuma Masahiro、Hirasawa Yuya、Kuramasu Atsuo、他
    • 雑誌名

      Cancer Science

      巻: 115 ページ: 752~762

    • DOI

      10.1111/cas.16061

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Turicibacter and Acidaminococcus predict immune-related adverse events and efficacy of immune checkpoint inhibitor2023

    • 著者名/発表者名
      Hamada Kazuyuki、Isobe Junya、Kuramasu Atsuo、他
    • 雑誌名

      Frontiers in Immunology

      巻: 14 ページ: 1164724

    • DOI

      10.3389/fimmu.2023.1164724

    • 査読あり
  • [学会発表] ヒスタミンH1受容体拮抗薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用による抗腫瘍効果の増強2024

    • 著者名/発表者名
      丸山祐樹、倉増敦朗、他
    • 学会等名
      第24回日本ヒスタミン学会
  • [学会発表] 抗ヒスタミン薬は免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果を増強する2023

    • 著者名/発表者名
      丸山祐樹、倉増敦朗、他
    • 学会等名
      第149回日本薬理学会関東部会
  • [学会発表] ヒスタミンH1受容体拮抗薬であるセチリジンのマウス乳がん細胞株4T1に対する抗腫瘍効果2023

    • 著者名/発表者名
      佐々木彩、倉増敦朗、他
    • 学会等名
      第149回日本薬理学会関東部会
  • [学会発表] 抗ヒスタミン薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用による抗腫瘍効果の増強2023

    • 著者名/発表者名
      丸山祐樹、倉増敦朗、他
    • 学会等名
      第36回日本バイオセラピー学会
  • [学会発表] 抗ヒスタミン薬は免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果を増強する2023

    • 著者名/発表者名
      倉増敦朗、丸山祐樹、佐々木彩、他
    • 学会等名
      第44回日本臨床薬理学会学術総会

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公開日: 2024-12-25  

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