研究実績の概要 |
静脈グラフト狭窄の背景に、移植前の静脈の質が移植後の血管壁リモデリングに影響を与えるという仮説で本課題は進められている。包括的高度慢性下肢虚血において、足部重症度を示すWIfI分類のWound grade2以上の重症例ほど、バイパスグラフトの一次開存率が有意に低値であったことから、Wound gradeが大伏在静脈のリモデリングに何らかの影響を来していると考えた。足部重症度が術前静脈に与える影響について、静脈壁の炎症マーカ発現をまず免疫染色で評価した。IL6, HMGB1, LPPR2, MCP1, MMP2, MMP9の6種の炎症マーカ-とコントロールを用いて、術前静脈壁を免疫染色したところ、足部に創傷のないWound grade0と大きな創傷をもつWound grade3の間で、いずれのマーカーもWound gradeの2群間で内膜染色率、中膜染色率、外膜染色率に有意差は認めなかった。IL6, MMP2/9, MCP1はWound gradeに関わらずどの患者の術前静脈壁でも高発現しており、内膜肥厚因子として従来捉えられているマーカーであるが、Wound gradeに着目した場合にはこれらの発現に差がなかった。 Wound grade 0-1 vs. 2-3の2群間での静脈壁外膜細胞の増殖能については、Wound2-3群でその増殖能がより高い傾向であった。これらの背景にある遺伝子発現を探るための遺伝子スクリーニングを行う予定であったが、獲得できた静脈組織が少なく現在収集中である。
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