研究課題
慢性心不全の予後は悪性腫瘍と同等に悪く、重症慢性心不全の根治療法は心臓移植のみである。心臓移植にかわる治療として再生医療が注目されているが、克服すべき課題も多い。iPS細胞の出現により再生心筋細胞の細胞源は確保され、現在残されている最も大きな課題は、最適な細胞移植法の開発である。レシピエントの心臓への長期の生着と機能の回復を実現するためには、ヒト心臓に近い微小心臓組織を構築し移植する必要があると考えられている。ヒトiPS細胞由来の心筋細胞、心臓線維芽細胞および血管内皮細胞を用いてヒト心臓オルガノイドを再構築することでヒト微小心臓組織の構築が可能となり、重症慢性心不全へのヒトiPS細胞を用いた次世代の再生医療を促進させることを目的とする。2022年度は、新たに開発したパターニングプレートを用いることにより、ヒトiPS細胞由来の純化心筋細胞、線維芽細胞 および血管内皮細胞を含む2.5Dヒト心臓オルガノイドを高効率に作製することに成功した。2023年度は、オルガノイド作成プロトコルを改良していき、上記の細胞種に加え、心外膜細胞やペースメーカー細胞を含むオルガノイドを作成することに成功し、さらに、心筋細胞のうち、心室筋及び心房筋への分化を仕分けすることにも成功した。
2: おおむね順調に進展している
2023年度はオルガノイド作成プロトコルを改良していき、上記の細胞種に加え、心外膜細胞やペースメーカー細胞を含むオルガノイドを作成することに成功し、さらに、心筋細胞のうち、心室筋及び心房筋への分化を仕分けすることにも成功した。一方で、心臓を構成する細胞のうち重要な要素である心内膜細胞を含むオルガノイドは作成できておらず、さらに心臓に特徴的な形態であるチャンバー形成などを再現できていないといった課題も生じた。今後更なる改良を加え、課題解決を目指す。上記の理由で、研究は順調に進展していると判断する。
今後は作製したヒト心臓オルガノイドをさらに進歩させ、同時に詳細に解析をしていく。続いて、In vivo実験において単一心筋細胞から構成されるスフェロイドと複数細胞から構成されるオルガノイドの移植後生着・生存率の違いを評価する。心筋梗塞領域周囲では血流が不足するため、ヒト心臓オルガノイドを移植した際に生着率が向上することが期待される。
2023年度は旅費のほか実験用材料、試薬、消耗品などを購入する費用として算出したが、材料、試薬、消耗品については実験室に残っていた分もあり、そちらから使用した結果、残額が生じた。2024年度はさらに実験のスケールアップを予定しており、昨年度よりも多くの試薬などを使用する予定であり、もともとの予定額を超える可能性があり、そこに残額を充てる予定である。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 4件) 図書 (1件)
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