研究課題/領域番号 |
22K08927
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
村田 智洋 日本医科大学, 医学部, 助教 (70832012)
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研究分担者 |
宮城 泰雄 日本医科大学, 医学部, 講師 (00350116)
石井 庸介 日本医科大学, 医学部, 教授 (10307895)
栗田 二郎 日本医科大学, 医学部, 助教 (20421183) [辞退]
網谷 亮輔 日本医科大学, 医学部, 助教 (30763594)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 多血小板血漿 / PRP / DDS / 徐放化ゲル / 心筋梗塞 |
研究実績の概要 |
実験基材である多血小板血漿(Platelet Rich Plasma, PRP)についてdouble spin法により目標である濃縮度での安定した生成に成功している.また実験における心機能評価方法として,超音波用造影剤であるペルフルブタンを用いたコントラストエコーの撮像方法を確立し,これに関して第123回日本外科学会で学会発表を行なった.また,予備実験に置いてPRPと生分解性徐放化ゲルの併用により心筋梗塞後の生理的・形態的な保存効果を認めている.具体的には心筋梗塞作成後の翌日からの心臓エコー検査での収縮能の指標である左室駆出率(% Ejection Fraction, %EF),左室内径短絡率(% Fractional Shortening, %FS),左室面積変化率(% Fractional Area Change, %FAC)の保存を認めた.この早期性から心筋梗塞後早期でのPRPの作用が示唆され,作用メカニズムとしてPRPの抗炎症作用によるものと考えている.さらに左室壁厚についても,エコー評価の範疇ではPRPを作用させた群において,心筋梗塞群よりも壁厚が保たれることがわかっている.生分解性徐放化ゲルについてはPRPから放出されたサイトカイン(IGF -1,PDGFββ )の徐放化を認めたが,徐放の安定性・保持性に問題があった.さらにはハンドリングや心表面への留置の安定性といった面についても改善が必要であると判断した.そのため心表面への貼付に最適化させた厚さ,形状の生分解性徐放化シートを作成した.新しい生分解性徐放化シートを用いて研究を行うため,改めて徐放化試験及び生体での実験を行う予定を立てている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初に使用していた生分解性徐放化ゲルは,PRP中に含まれ心機能の保存に関与していると思われるサイトカイン(IGF-1,PDGFββ)の保持性が弱いことが徐放化能力試験によって明らかとなった.これを改善し,さらにはハンドリングや心表面への留置に最適化したマテリアルとして新たな生分解性徐放化シートを作成し今後使用する予定としている.この新しい生分解性徐放化シートでの徐放化能力試験及びその効果の評価を今後行う予定である.実験基材変更により,当初に計画していた経過よりも遅延が生じている.しかし,今後の方針は定まっており着実に計画を進めていく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
まず新しく作成した生分解性徐放化シートとPRPを併用し,これの心表面への留置方法(サイズ,固定方法)を検討する予定である.心表面への留置モデルを決定した後にin vivoにてその効果を評価する予定としている.またコントロール群としての心筋梗塞のみを施行した群や, PRPを含浸させず生分解性徐放化シートのみを留置した群についても評価を予定している.合わせて,新しい生分解性徐放化シートにPRPを含浸させ着目している抗炎症作用に関与していると考えられるサイトカイン(IGF-1,PDGFββ,TGF -β)についてその徐放化能力を評価する予定である.これらの後にさらにPRPによる心筋梗塞後の生理的・形態的な保存効果のメカニズムについて,抗炎症作用に着目しアポトーシスの抑制効果やオートファジー,マクロファージの変化といった現象について研究を進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
生分解性徐放化ゲルから,新しい実験基材である徐放化シートへの変更に伴い予定していたin vivoでのそれぞれの群でのデータ収集は延期となっている.実験計画の変更に伴い次年度使用額が生じた.今後の使用計画としては徐放化シートでの心表面への留置においての最適なサイズの決定や安定した固定方法の検討を予定している.さらには留置モデルを確立した後にはそれぞれの群に応じてのin vivoでの心筋梗塞後の心機能の保存効果を検討する実験や,新しいシートでの徐放化能力を評価する実験を行う予定でこれに対し科研費の使用を予定している.
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