研究課題/領域番号 |
22K08940
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
清水 雄介 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10327570)
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研究分担者 |
神里 興太 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10554454)
角南 寛 琉球大学, 医学部, 特命准教授 (50374723)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脂肪幹細胞 / エクソソーム / 再生医療 / 脊髄虚血 / 対麻痺 / 脊髄損傷 |
研究実績の概要 |
今年度は1)ラットからの「脂肪採取、脂肪幹細胞抽出、培養」 2)「脂肪幹細胞培養上清からのエクソソーム抽出」3)「ラット脊髄虚血後痙性麻痺モデルに対する同種エクソソーム注入」の3つを軸として研究を推進した。 1)「脂肪幹細胞採取、脂肪幹細胞抽出、培養」に関しては野生型ラットから脂肪を採取した後、脂肪幹細胞の抽出を実施した。これまでにも当研究チームで実施した経験から、この抽出した脂肪幹細胞を培養し、安定的に増殖させる技術を問題なく確立できた。また脂肪幹細胞の性質をフローサイトメトリーで確認した。今後も脂肪幹細胞抽出、培養を継続し、技術を洗練させていく予定である。 2)「脂肪幹細胞上清からのエクソソーム抽出」に関しては、以前より我々が行っているヒト脂肪幹細胞培養上清からのエクソソーム抽出方法に準じながら実施した。この点について、幹細胞培養上清からエクソソームを精製するための新しいキットを開発し特許を取得した。同キットを用いてエクソソームを精製し品質の解析を継続中である。現在はエクソソームの精製効率をあげるための工夫を行っている。 3)「ラット脊髄虚血後痙性麻痺モデルに対するエクソソーム注入」に関しては、まず安定的なモデル動物(ラット大動脈遮断による痙性麻痺モデル)の確立を目指し実験を推進し、安定的なモデル動物の準備が可能となった。またラット脂肪幹細胞から精製したエクソソームを安全に脊髄に注入するための手技(=脊髄軟膜下注入法)を繰り返し、注入手技に関して習熟し、問題なく施行することを確認した。今後は我々が新たに開発したエクソソーム精製キットを用いて脂肪幹細胞培養上清からエクソソームを精製し、準備した脊髄障害ラットに対する軟膜下注入を繰り返す予定である。またエクソソーム注入後にどのように効果が作用するかを行動実験で確認し、エクソソームの痙性対麻痺に対する運動機能回復効果を評価検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SD系ラットからの1)ラットからの「脂肪採取、脂肪幹細胞抽出、培養」 2)「脂肪幹細胞培養上清からのエクソソーム抽出」3)「ラット脊髄虚血後痙性麻痺モデルに対するエクソソーム注入」に関してそれぞれ順調に実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
1)野生型ラットからの「脂肪採取、脂肪幹細胞抽出、培養」に関してはこれまで問題なく実施できており、さらに安定した脂肪幹細胞の抽出・培養を継続していく。検討項目としてはより安全な採取部位や採取年齢(週令)である。また同一ラットでも採取脂肪や保存・凍結・解凍方法により脂肪幹細胞の品質が変わる可能性があるため、品質評価を繰り返していく。2)「脂肪幹細胞培養上清からのエクソソーム抽出」に関して抽出自体は問題なく実施できている。しかし定量評価や定性評価など、その解析に時間を要している。今年度は将来的な臨床応用の可能性も視野に入れ、ラットのみではなくヒト脂肪幹細胞培養上精由来のエクソソームを実験に用いることを検討する。3)「ラット脊髄虚血後痙性麻痺モデルに対するエクソソーム注入」については、モデル動物の安定的作成と軟膜下投与手技の習熟に関して問題なく遂行できている。手術手技による運動機能低下の差異は認めず、軟膜下注入手技自体の安全性は確認することができている。2)の進捗に伴い3)も問題なく実施できると考えている。今年度は2)で作製したヒト由来脂肪幹細胞培養上清エクソソームの投与も検討する。また確実な運動機能評価のため、電気生理学的検討の準備も推進する。具体的には単反射であるH波解析に加え、総合的な運動機能評価法である運動誘発電位MEP計測を実施する計画である。また単反射であるF波解析の機器セットアップを進める。H波・MEP・F波解析を実施する。免疫組織染色の準備も進め、組織形態学的評価に加え、炎症性および抗炎症性タンパクの評価も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラットから抽出した脂肪幹細胞の培養や、ラット脊髄虚血モデルの作製について当初の予定よりも効率よく実験が進んだため。次年度は実験に使用するラットの数を増やしつつ、ヒト脂肪幹細胞由来エクソソームの定量・定性解析や、脊髄組織の免疫組織染色を進めていく。
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