研究課題/領域番号 |
22K08952
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
長岡 英気 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (30526463)
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研究分担者 |
大内 克洋 順天堂大学, 医療科学部, 先任准教授 (20322084)
川嶋 健嗣 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (40300553)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 手術用ロボット / 心臓手術 / 低侵襲心臓手術 / 力覚提示 |
研究実績の概要 |
独自の空気圧駆動により術者に感覚をフィードバックする機能を持つ新たな国産ロボットSaroaを用いて心臓手術における力覚センサーの有用性を検証してい る。 Saroaを用いて模擬の僧帽弁輪に一定方向から針糸をかけ手抜くまでの動作を行い、力覚提示がある場合とない場合の術者がコンソールにかける力とロボットが 組織にかける力をそれぞれ比較検討した。術者の慣れとシミュレーターの劣化の影響を排除するため力覚提示をなし→あり→あり→なしでそれぞれ10回ずつの糸 かけを行った。 (力覚提示なしvs. 力覚提示あり)の比較において右手(持針器)の平均出力(N)は(5.127±1.293 vs. 2.536±1.281, p < 0.001)で、左手(鑷子)の平均出力 は(3.577±0.6811 vs. 1.296±0.8923, p < 0.001)であり、両方のアームにおいて明らかに力覚提示ありの場合に出力が低くおさえられていることがわかった。 各運針にかかった時間は(34±9 vs. 40±10, p = 0.08)秒であり力覚提示なしの方が短い傾向にあった. これまでに朗からになった点としては力覚提示機能を用いることにより明らかに出力が減少したが、運針にかかる時間は延長する傾向にあった。この結果を第76回日本胸部外科学会定期学術集会において発表したが、我々の意見と同様に持針器の把持力に関するフィードバックは不要で、それよりは鉗子にかかる外力のフィードバックが必要であるという意見が寄せられた。この意見を元に鉗子にかかる外力フィードバック機能を実装してもらう予定であるが、市販後のユーザーの意見でより正確な鉗子の動きが求められているためその調整を先に行ったため外力フィードバック機能の装備が遅れている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定で本年は模擬臓器による力覚提示の違いをロボットの把持力だけで無く、鉗子にかかる応力も含めて検討する予定であったが、市販後に寄せられた外科医からの意見でロボットのより正確な動きを求められており、その調整を先に行った結果、鉗子にかかる応力まではフィードバック出来ていない。
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今後の研究の推進方策 |
企業側としては現在のユーザーの声に応える事は必要条件であるため、現状のロボットで力覚フィードバックがない状態でも研究を進めなければならないと考えている。それでも海外製のロボットとは異なり、企業側がデータを全て提供してくれるため模擬臓器にかかっている外力の数値を取り出しどこでどの程度力が掛かっているかを可視化する事が可能と考える。 また、動物実験は動物愛護の観点からなるべく行わない事が推奨されており、このため摘出したブタ臓器などを用いた実験を続け、実際の心臓などの臓器の縫合にどの程度の力が掛かっているかを可視化する事を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の様に当初予定していた鉗子にかかる外力のフィードバック機能の実装が遅れており、このため主たる実験を開始出来ない状況にある。年内にこの機能の装備が出来る予定と聞いているが、実際の所は難しい可能性もあり、すでにある機能から結果を出すような実験に修正し、データの解析を進めたいと考えている。
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