研究課題/領域番号 |
22K08954
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
六鹿 雅登 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (80447820)
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研究分担者 |
齋藤 明広 静岡理工科大学, 理工学部, 教授 (50375614)
成田 裕司 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60378221)
小土橋 陽平 静岡理工科大学, 理工学部, 准教授 (60723179)
緒方 藍歌 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (70718311)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 人工血管 / 感染 / ポリマー / 抗菌 |
研究実績の概要 |
人工物を留置する治療では、術後人工物感染が発症すると難治化しやすく、中でも人工血管感染は生命予後に直接影響し最も治療に難渋する疾患の一つである。治療法として、感染人工血管摘出と周囲感染組織のデブリードマンや大網充填など侵襲度の高い手術が行われるが、どの方法もエビデンスレベルで確立された治療ではない。また、既存人工血管には抗菌機能はない。従って、感染を予防・制御をする材料や構造を持つ人工血管の開発は、人工血管感染の治療体系や手術成績の向上、患者の救命に寄与すると考える。研究代表者らは、抗菌性を有するポリマーPoly[2-(methacryloyloxy) ethyl] trimethylammo-nium chloride; Poly(METAC)を用い、濃度や形状による抗菌効力差、ボリビニルアルコール(PVA)共重合化によるフィルム状への加工形成と血液適合性を示し、医療材料としての有用性を報告してきた。本研究では、Poly(METAC)-PVAを基材とした抗菌性人工血管の創出を目的とする。本年度では、Poly(METAC)-PVAの繊維化加工に成功したが、Poly(METAC)含有量の減少に伴い抗菌性が低下したため、Poly(METAC)-PVA基材表面にPoly(METAC)を修飾することで、大腸菌は膜破壊を起こし抗菌性を維持させることに成功した。しかし、繊維が縮んでしまう現象がみられたため、高分子構造の再検討が必要であることが判明した。そこで、PVAに熱架橋した共重合体を繊維化してからPoly(METAC)を化学修飾したところ、繊維は縮まず、繊維表面に均一にPoly(METAC)がコーティングされており、抗菌効果が維持されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた高分子構造の最適化検討の成果が得られたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
抗菌性高分子の細胞毒性や力学特性、抗菌性評価および管腔構造加工を行う。細胞毒性評価は、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞、線維芽細胞を対象に、培養培地にPoly(METAC)-PVA溶液を添加し、経時的に細胞生存能(生細胞:カルセイン染色、死細胞:EthD-1染色)を評価する。血液適合性試験は、ラット血液を洗浄して赤血球を取り出し、赤血球とPoly(METAC)-PVA溶液を37℃で5, 30, 60分間インキュベーションしたのち、波長564nmで吸光度を測定して溶血率を評価する。力学特性は、In vitroにて物性試験(引張特性、弾性特性、透水性など)や耐久性試験(血管の屈曲,伸縮,ねじりなどの変形による繰り返し負荷を加速的に作用)を行い、縫合時の操作性を既存ダクロン人工血管と比較検討する。また、抗菌性高分子の管腔構造加工する。もし加工が難しい場合は、既存人工血管に抗菌性高分子をコーティングする方法も考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
情報のアップデートのための国内外調査研究旅費を計上したが、開催された学会や研究会はweb参加であったため旅費を使用しなかった。また、本年度はポリマー構造の条件検討や抗菌性評価、細胞毒性評価に必要な多くの試験試薬やディスポーザル用品などの物品費を計上していたが、抗菌性評価と細胞毒性評価に至らなかったため次年度使用額に差が生じた。次年度では、抗菌性評価、細胞毒性評価および安全性評価を行う予定であるため、評価のための試験試薬等の物品費に使用する予定である。また、国内外での学会発表や成果報告として論文の外国語校閲および投稿料として使用する。
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