研究課題/領域番号 |
22K08958
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
織田 禎二 浜松医科大学, 医学部, 協定訪問共同研究員 (50448198)
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研究分担者 |
鈴森 康一 東京工業大学, 工学院, 教授 (00333451)
明穂 一広 島根大学, 医学部, 臨床工学技士長 (10873515)
難波江 裕之 東京工業大学, 工学院, 助教 (90757171)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 心臓の構造 / 左室収縮能 |
研究実績の概要 |
模擬心臓を製作するために、当初予定したヒト心臓を検体(cadaver)を用いることが倫理的な観点からできないことが判明したため、ブタ心臓を用いて学説(unique myocardial band説)の提唱者であるGuasp先生の方法に従って、捌く試みを繰り返し、心筋バンドに解くことに成功した(Guasp先生の方法の再現に成功した)。この過程、つまり、ブタ心臓処理前、捌いた心臓(心筋バンド;脱構築)、さらにこの心筋バンドを元の心臓の構造に巻き戻した状態(再構築)をそれぞれ臨床用高性能CTで撮像し、3Dビューアで画像を確認した。 このデータをDICMOファイルとして研究分担者である東京工業大学の鈴森研究室に送り、3Dプリンタ出力してブタ心筋バンドの軟組織モデルを製作することに成功した。今度はこのモデルに人工筋を配置してブタ心臓から再現した模擬心臓モデルを製作する予定である。 一方、臨床用のCT画像データの専用アプリであるVINCENT(富士フイルムメディカル)を用いてヒト心臓CTデータ(操作練習用に用いられる実際のヒト心臓CTデータ)を実際に心臓を捌くのではなく、データ上で捌くことができることが分かり、現在その解析作業を進めている。この解析に成功すれば、当初の予定とは異なるが、実際のヒト心臓を用いることなく、正常ヒト心臓、病的心臓(心不全心臓)のCTデータをVINCENTを用いて捌くことが可能となり、さらに捌いたデータをDICOM変換し、さらにSTL出力することで3Dプリンタ出力が可能となり、ヒト正常心臓を再現した模擬心臓、中等度心不全心臓を再現した模擬心臓、高度心不全(心臓移植対象レベル)心臓を再現した模擬心臓を製作可能となる。これを実際の心臓の拍動を真似て駆動させることにより正常心臓の機能と心不全心の機能を再現することが可能となり、新たな心不全研究の方法論に発展しうる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した方法論(ヒト献体を用いて実際の心臓を学説に基づいてバンド状に捌く)から、心臓CTデータを利用してこれを専用アプリ(VINCENT)を用いてデータ上で心臓を捌くことができることが見出されたため、この方法を発展させることにより、研究計画を進めることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
浜松医科大学の医の倫理委員会に申請して承認を得た後、正常心臓の心臓CTデータ、複数の段階の心不全の心臓CTデータにアクセスして、アプリ(VINCENT)を用いてデータ上で心臓を捌いてバンド状に解き、これを3Dプリンターを用いて出力してシリコン製心筋バンドを製作しこの上に人工筋(東京工業大学の鈴森研究室製作)を配置して空圧駆動して、実際の正常心、心不全心の拍動をモック回路に接続して再現する。心臓を拍動させ、実際に液体を拍出させるためには模擬の血管・弁が必要になる。これらは現在、臨床用の人工血管、人工弁を用いて製作しているが、将来的にはこれらについても新しい模擬血管、模擬弁の開発が別に必要になる。さらに模擬心臓の拍動を観察するためには心エコー法は非常に有用であるため、模擬心臓をファントム内に埋込み心エコー装置による模擬心臓の心機能解析を可能にする必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、購入を予定していた人工筋を研究分担者の東京工業大学の研究室の余りを使用できたたため、その経費分が浮いたが、研究計画書の作成の段階では想定していなかった経費として模擬血管、模擬心臓弁の製作のための備品購入費、完成した模擬心臓を拍動させる際、より精密な計測のために必要となる流量計や圧センサーの購入が必要になる。また、3Dプリンターによる出力はこれまで、すべて東京工業大学にお願いしていたが、心臓CTデータのアプリ上での解析の成功率を高めるためには、研究代表者自身が解析結果をすぐに3Dプリンタ出力で確認できれば解析の正誤を迅速に判断できるため研究の進捗に有効である。このため、簡易な3Dプリンタを購入して、研究計画を達成する予定である。
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