研究課題/領域番号 |
22K08978
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
吉元 崇文 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 研究協力員 (60899532)
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研究分担者 |
土肥 良一郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (00817786)
土谷 智史 富山大学, 学術研究部医学系, 特命教授 (30437884)
永安 武 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80284686)
松本 桂太郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80404268)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肺再生 / オルガノイド移植 / 血管化 / マイクロ流体デバイス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は第一に、血管新生の素地をもった多細胞系肺胞オルガノイドを構築することである。第二に、生体内肺血管網を再現した生体由来3次元マトリックス上において、移植オルガノイドと生体内肺血管網との連結を達成することである。第三に、マウス移植による生体内環境において多細胞オルガノイドを肺組織への定着率改善・成熟化を達成することである。将来的なオルガノイド移植の基礎技術の開発が期待できる。 令和4年度は多細胞系肺胞オルガノイドの作製を開始した。マウス肺組織より単離した2型肺胞上皮細胞を用いた単一細胞集塊(スフェア)を作製しフィーダーフリー培養で継代・長期培養する技術を習得した。この構造体を基本とし、2型上皮細胞のニッチ細胞である脂肪線維芽細胞や、血管内皮幹細胞の単離と内皮細胞の細胞集塊の組み込みを行う予定とし、現在、各細胞の単離・培養へ取り組んでいる。肺胞オルガノイドの血管化技術はまだ報告がなく、重要なオルガノイド培養技術となりえる。 令和5年度は、オルガノイドを播種する生体内肺血管網を再現した生体由来3次元マトリックスの作製、および同マトリックス上の血管網とオルガノイド内血管とを連結する技術の開発へ着手した。具体的にはオルガノイドと細胞間質との間の血管化および生着を評価する実験系として、マイクロ流体デバイスであるOrganoplateを用いた3次元培養モデルへの取り組みを開始した。また、最終的な生体内へのオルガノイド移植実験へ向けて、エラスターゼ誘導マウス肺気腫モデルの準備と、移植オルガノイド細胞を標識するための各種細胞のレポーターマウスを用いた研究の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脂肪線維芽細胞の同定法が複数あり、単離方法の決定と習得に時間を要し、多細胞系肺胞オルガノイドの培養確立が遅れている。また、マウスより血管内皮細胞を単離する技術の習得に時間を要し、また市販されている細胞株での代用も選択が少なく、研究の核心部分であるオルガノイド血管化法の開発が遅れている。以上の理由により、当初の実験計画よりも実験進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進策として、多細胞系肺胞オルガノイドの確立を延期し、研究の核心部分である肺胞オルガノイドの血管化への取り組みを急ぐ。現時点での律速段階となっている血管内皮細胞については単離・培養技術の提供を受ける必要があり、研究協力をお願いする。血管内皮細胞の単離・増殖の技術を獲得したのちは、計画に沿って研究を加速度的に進めていく。血管化については流体デバイスを用いたフロー刺激やVEGF濃度勾配などの刺激を加える必要があり、導入したマイクロ流体デバイスOrganoplateによって3次元培養モデルでの血管化および間質への生着の観察・解析が容易になると見込まれ、研究を推進できるはずである。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた血管網構築とオルガノイドへの連結の実験の遅れに伴い物品費の執行ができなかったため残額が生じた。翌年度において、各種細胞の単離・培養またはオルガノイド培養の試薬、脱細胞化肺組織採取の試薬、マイクロ流体デバイスであるOrganoplateおよび関連する試薬の追加購入、さらには遺伝子組み換えマウスを含めた実験動物を購入するための費用、飼育費が必要となる。また、解析の工程においては、オルガノイドの免疫染色、電子顕微鏡像の撮像、血管網の観察のために二光子顕微鏡用の試薬、脱細胞化細胞外基質の蛋白染色、マイクロアレイによる遺伝子発現解析、などに必要な試薬を購入するために計上する。さらに、研究成果の発表のための旅費や論文投稿費などに使用する予定である。
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