研究課題
中皮腫(MM)はアスベストの曝露が原因とされ、発病までの期間は約20-30年と言われている。いまだに、治療が難しいことで知られているがその理由として、呼吸困難や息切れなどの自覚症状が出たり、画像で胸膜の肥厚が認められたときにはすでに進行していることが多いことが挙げられる。また、アスベストの曝露による中皮腫発症の分子メカニズムは明らかになっておらず、早期診断マーカ-や分子標的薬の開発が望まれている。中皮腫では、がん抑制遺伝子である神経線維腫症2型遺伝子NF2, p16INK4a. BAP1遺伝子のゲノム異常が高頻度で検出されているがこれらの遺伝子の中皮腫発症における役割は不明である。またNF2/p16 INK4a, NF2/BAP1の組み合わせで同時に不活化している症例が多い。しかし、これらの遺伝子異常がMM発症にどのように関わっているのかは不明であり、MMの発症と進展に関わる分子病態の解明とそれに基づく新しい分子標的薬の発見が望まれる。年度申請者は、正常中皮細胞 (MeT-5A, HMOC) に対してゲノム編集を行い、 (NF2-/-,p16 INK4a-/-) 二重欠失細胞を樹立し分子標的と治療薬候補の探索を行い、遺伝子発現解析から、新規分子標的候補としてFASNを見だし、この二重欠失細胞と400個の化合物ライブラリーを用いた薬剤感受性試験を行い、セルレニンを発見した。また、申請者はMMの化学療法剤であるシスプラチンまたはペメトレキセドと比較すると、阻害剤セルレニンは二重欠損株に対して細胞生存率を有意に低下した。さらに、免疫不全マウスに二重欠失 MM 細胞を移植したin vivo実験において、脂肪酸代謝経路阻害剤セルレニンの腫瘍増殖抑制効果を検討した。その結果、セルレニン投与のマウスでは、コントロールマウス比べて有意に腫瘍体積の低下が観察された。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに進んでいます。
cDNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、癌抑制遺伝子NF2, p16, BAP1の制御を受ける下流標的遺伝子を解析する。さらに、ヒートマップ解析やデータベ-スを用いた解析から同定されたNF2, p16, BAP1の標的分子は中皮腫の新たな治療戦略のための分子標的候補や診断マーカーとして検討する。遺伝子異常に基づいた阻害剤の探索と創薬向けた基礎的検討を行う。具体的には(NF2-/-,p16INK4a-/-)二重欠失や(BAP1-/-, p16INK4a-/-)二重欠失細胞を用いて新たに約1600個の化合物ライブラリーを用いて,MPM細胞に選択的な阻害効果を示す化合物の探索を行う.MTTアッセイによるスクリーニング試験とIC50値から,増殖に対する阻害効果を判定する.本研究では、二重欠失細胞株に対する脂肪酸代謝経路阻害剤セルレニンの作用機序を解析し、抗腫瘍効果の分子機構の解明を目指す。
コロナウイルスの影響で海外物品の納品が遅れることがわかりその分の費用が次年度に回ることになったため。
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