研究課題/領域番号 |
22K08991
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構山口宇部医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
沖田 理貴 独立行政法人国立病院機構山口宇部医療センター(臨床研究部), その他部局等, 呼吸器外科医長 (90467762)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 悪性胸膜中皮腫 / 免疫チェックポイント / 予後解析 / 炎症 / 腫瘍微小環境 / 胸水 / 腫瘍免疫 |
研究実績の概要 |
まず、悪性胸膜中皮腫の臨床検体を用いて、悪性胸膜中皮腫における腫瘍微小環境、特に免疫チェックポイント分子と免疫活性化分子(以下、免疫調整分子)の発現解析を行い、予後因子となる治療標的候補分子を同定すべく、研究を開始した。 これまでに、悪性胸膜中皮腫の手術例において、血液検査で測定可能な免疫、炎症指標と腫瘍組織におけるPD-L1発現(免疫組織化学反応法で評価)との関連について検討を行い、末梢血好中球リンパ球比と腫瘍組織における免疫細胞のPD-L1発現との間に正の相関関係があることを見出し、臨床病理学的因子、予後との関連性も含めて、英文原著論文”Preoperative neutrophil-to-lymphocyte ratio correlates with PD-L1 expression in immune cells of patients with malignant pleural mesothelioma and predicts prognosis”としてScientific Reports誌に報告した。 さらに、悪性胸膜中皮腫と繊維素性胸膜炎の症例計56例について、胸水中の免疫調整分子(可溶性PD-L1、TGFb、等)の測定を行い、胸水中の各免疫調整分子の濃度と臨床病理学的因子、予後との関連について、統計解析中である。現時点で、免疫調整分子X、Yは悪性胸膜中皮腫の上皮型と非上皮型で濃度に差があること、免疫調整分子X高濃度群は悪性胸膜中皮腫において、独立した予後不良因子であることを見出しており、学会発表準備中である。今後、胸水中の免疫調整分子濃度測定症例について、組織標本を用いた腫瘍微小環境の解析も併せて進めることで、悪性胸膜中皮腫の組織と胸水双方の腫瘍微小環境を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性胸膜中皮腫の組織検体を用いた免疫チェックポイント分子や腫瘍浸潤リンパ球の解析は継続的に行っており、すでにデータベース化している。これにより、新たに収集した患者血液検査所見との関連性について、速やかにデータ解析を行なうことができ、得られた知見を英文原著論文として発表することができた。 さらに、胸水中の免疫調整分子(可溶性免疫チェックポイント阻害剤、各種サイトカイン)濃度についても、56例の測定を終え、統計解析により興味深い予後因子を見出している。よって、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
胸水中の免疫調整分子については、これまでに56例について免疫調整分子6項目の測定を完了し、悪性胸膜中皮腫の組織型との関連、予後因子について、新たな知見を得ている。さらに測定検体数を増やすべく、試薬を追加購入済みであり、今年度中に約80例の胸水検体について免疫調整分子6項目の測定を完了できる見込みである。 さらに胸水中のケモカインについても解析を拡げることとした。具体的には、悪性胸膜中皮腫と線維素性胸膜炎症例から得られた胸水約80検体について、multi-plex解析により40項目のケモカインを同時測定する計画であり、得られるデータから、悪性胸膜中皮腫と線維組成胸膜炎の鑑別診断に役立つ分子や、悪性胸膜中皮腫の発症と進展に関わる分子を特定できる可能性があり、未解明領域である悪性胸膜中皮腫胸水中の腫瘍微小環境について新たな知見が得られるものと期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
悪性胸膜中皮腫の胸水検体を用いて、1検体から40項目のケモカインを同時に測定するためのmulti-plex解析試薬の購入を計画も、1キットが80万円以上し、本実験系に必要な他の試薬代も含めると、R4年度の研究費のみでは資金が不足し、R4年度の購入は不可能であった。よって、R4年度は悪性胸膜中皮腫患者の臨床情報の集積と組織検体の免疫染色に重点をおき、直接経費の大部分を次年度に使用予定とした。 Multi-plex解析試薬については、R4年度の研究費と次年度(R5年度)の研究費を合算のうえで、R5年度、すでに購入済み(811239円)であり、R5年度中にmulti-plex解析を終える予定である。
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備考 |
研究成果については適宜内容を更新予定である。
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