研究課題/領域番号 |
22K09016
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
神田 浩嗣 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (00550641)
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研究分担者 |
神田 恵 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50516820)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | GABA / 遺伝子治療 / 神経障害性疼痛 / ウイルスベクター |
研究実績の概要 |
近年、遺伝子治療は様々な分野で注目されており、臨床応用が開始されている分野もあるが、ペインクリニックにおいては痛みの遺伝子治療は確立されていない。これまでに代表者は痛みの遺伝子治療の有用性やその鎮痛機序を解明する研究成果を継続的に報告してきた。本研究はグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)67を発現させ脊髄後角のγ-アミノ酪酸 (GABA) 合成を促進するウイルスベクターを用いた遺伝子治療の有用性を明らかにし、そのメカニズムを解明することを目的としている。本研究は、以下の1)~3)に示す研究内容から構成されている。1)GABA産生の促進のためGAD67を導入するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを作成する。作成したAAVベクターには、神経細胞特異的に標的遺伝子を発現させるためのプロモーターを装備させ、神経組織でのみGABA産生が促進する機能を付加させる。2)作成したAAVベクターの機能評価を行う。機能評価には初代培養神経細胞および実験動物(ラット)を用いる。3)疼痛モデルにAAVベクターを投与して行動解析を用いて疼痛閾値を経時的に測定し、その鎮痛効果と分子生物学的機序を調べる。2022年度の研究実績:1)の研究を行った。その方法と共にその結果を次に示す。緑色蛍光タンパク質(GFP)をサイトメガロウイルス(CMV)またはシナプシンI (SYN)プロモーター制御下で発現するAAVベクターを作成した。この2種のAAVベクターをラットに髄注しPCR法及び免疫染色法を用いて脊髄における導入遺伝子の発現を調べた。PCR法においては両群でラット脊髄のGFP発現が誘導された。免疫染色法では、SYN-AAVベクター投与群でのみ神経細胞特異的なGFP発現が認められた。SYNプロモーターを持つAAVベクターはラット脊髄の神経細胞へ特異的に標的遺伝子を導入する性質を持つことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、当初の予定通りに本研究を進めていくことが困難な期間が数か月間という長期間に及んだことが主な理由である。具体的には、本研究を進めるにあたり、共同研究者、分担研究者、研究協力者との複数人でのカンファレンス開催や、各自が分担する実験業務、加えて、国内外学会参加による本研究に関するディスカッションの機会がほとんどなく、本研究の遂行のための重要な業務(トラブルシューティングおよびブラッシュアップ等)に影響を及ぼしたため、予定よりも研究の進行がやや遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、上記の研究の概要で示した次の研究内容2)~3)を進める予定である。 2)1)で作成したアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの機能評価を行う。機能評価には初代培養神経細胞および実験動物(ラット)を用いる。3)疼痛モデルにAAVベクターを投与して行動解析を用いて疼痛閾値を経時的に測定し、その鎮痛効果と分子生物学的機序を調べる。2023年5月8日以降は新型コロナウイルス感染による研究業務への影響は緩和されることを見込んでいるため、2023年度からは当初の研究計画に戻り、代表者、分担者、研究協力者との複数人でのカンファレンス開催、各自が分担する実験業務の遂行、国内外学会参加による本研究に関するディスカッション等の本研究の遂行のための重要な業務(トラブルシューティングおよびブラッシュアップ等)を積極的に行い、本研究を発展させていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は新型コロナウイルス感染拡大のため、勤務の制限および当初の予定通りに本研究を進めていくことが困難であった。具体的には、本研究を進めるための共同研究者、分担研究者、研究協力者との複数人でのカンファレンス開催や、各自が分担する実験業務にも影響があり、研究遂行に支障をきたした。加えて、国内外学会参加による本研究に関するディスカッションの機会がほとんどなかったため、国内外学会への参加のための旅費、参加費、宿泊費などの使用がなく2022年度の使用額が予定よりも低くなり、次年度使用額が生じた。
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