研究実績の概要 |
2022年度は55症例でADHDスコアと内因性鎮痛機能の評価を行った。採択前に蓄積した症例と合わせて中間解析を行った。【方法】189名(男性106名, 女性83名) (年齢67.83±12.28歳) (2018年8月~2022年10月) を対象にコナーズ成人ADHD尺度(CAARS) を用いてADHDのスクリーニングを行い、その陽性率と、陽性群と陰性群の間で各痛み関連スコアに差があるかを後ろ向きに検討した。CAARS-S(患者回答)かCAARS-O(家族回答)のいずれかの下位尺度得点が65点を超えた場合にADHD陽性とした。痛み関連尺度としてVAS(visual analog scale)、HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)、PCS(Pain Catastrophizing Scale) を用いた。【結果】CAARS-S/O両方を実施できた155名を解析対象とした。62名(40.0%)でADHD陽性であった。HADSの不安(A)、うつ(D)、PCSの尺度はいずれも陽性群で有意に高値であった(HADS-A:陽性群 7(4-12) vs陰性群 5(3-8), p<0.01, HADS-D:陽性群 9(6-11) vs陰性群 5(4-8), p<0.001, PCS:陽性群36(29-42) vs 陰性群32(24-38), p<0.01)。VAS は有意差がなかった(陽性群60.5(38-80) vs 陰性群52(25-75), p=0.13)。(Mann-WhitneyのU検定を使用)【考察】整形外科外来の慢性痛患者においてもADHDは高頻度に併存する可能性がある。ADHD陽性群では不安・うつ・破局的思考を示すスコアが有意に高く、ADHDの併存は慢性痛の症状に関与する可能性がある。ADHD併存の慢性疼痛は、脳内のドパミンやノルアドレナリンの神経伝達を調整するADHD治療薬によって大きく改善し得ることが報告されており[Kasahara S, et al. Psychosom Med. 2020]、精神科医との連携が必要である。整形外科疾患の慢性疼痛診療においてもADHDスクリーニングは治療方針の決定に有用な可能性がある。今後も引き続き症例を蓄積し、調査を継続する予定である。本研究成果については、2023年6月に開催される、日本麻酔科学会第70回学術集会で発表を予定している。
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