研究実績の概要 |
【目的と方法】注意欠如多動性障害(ADHD) の整形外科外来の慢性痛患者における調査の報告はない。整形外科通院中の慢性痛患者189名(男性106名, 女性83名) (年齢67.83±12.28歳)を対象にコナーズ成人ADHD尺度(CAARS) を用いてADHDのスクリーニングを行い、その陽性率と、陽性群と陰性群の間で各痛み関連スコアに差があるかを後ろ向きに検討した。CAARS-S(患者回答)かCAARS-O(家族回答)のいずれかの下位尺度得点が65点を超えた場合にADHD陽性とした。痛み関連尺度としてVAS(visual analog scale)、HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)、PCS(Pain Catastrophizing Scale) を用いた。【結果と考察】CAARS-S/O両方を実施できた155名を解析対象とした。62名(40.0%)でADHD陽性であった。HADSの不安(A)、うつ(D)、PCSの尺度はいずれも陽性群で有意に高値であった(HADS-A:陽性群 7(11-16) vs陰性群 5(3-8), p<0.01, HADS-D:陽性群 9(6-11) vs陰性群 5(4-8), p<0.001, PCS:陽性群36(29-42) vs 陰性群32(24-38), p<0.01)。VASは有意差がなかった。(Mann-WhitneyのU検定を使用) 整形外科外来の慢性痛患者においてもADHDは高頻度に併存する可能性がある。ADHD陽性群では不安・うつ・破局的思考を示すスコアが有意に高く、ADHDの併存は慢性痛の症状に関与する可能性がある。ADHD併存の慢性疼痛はADHD治療薬によって改善し得ることが報告されておりADHDスクリーニングは治療方針の決定に有用な可能性がある。
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