研究課題/領域番号 |
22K09032
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
高原 章 東邦大学, 薬学部, 教授 (80377481)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 麻酔薬 / 催不整脈作用 / Torsade de Pointes / IKr遮断薬 / プロポフォール / セボフルラン / QT延長 |
研究実績の概要 |
Sevofluraneとpropofolが有する催不整脈作用特性の相違を電気生理学的手法により明確にすることを目的に研究を進めた。Sevofluraneまたはpropofolで麻酔した完全房室ブロックウサギより体表面心電図と右室単相性活動電位(MAP)を記録し、右室ペーシング下(刺激間隔1000 ms)でIKr遮断薬dofetilideを投与した。その結果、sevoflurane群(S群)とpropofol群(P群)でQT間隔とMAP90が有意に延長し、R on T 型心室期外収縮およびtorsade de pointes(TdP)の発生が認められた。DofetilideによるTdP発生はS群で6例中4例に、P群で6例中1例に認められた。またTdP発生前のR on T型心室期外収縮の平均出現数は、S群で16回/30秒、P群で6回/30秒であった。次に、dofetilide投与中にMAP持続時間(MAP90)と有効不応期(ERP)を基本刺激間隔300~1000 msで測定し、活動電位終末相(TRP)をMAP90-ERPより求めた。その結果、dofetilideによるMAP90とERPの延長作用はP群に比べてS群で、特に低頻度刺激条件で強く認められた。TRP はS群に比べてP群で大きく、S群ではERP測定時に期外刺激による不整脈誘発は認められなかったのに対し、P群で不整脈が6例中2例に誘発された。DofetilideによるTdPの自然発生はP群に比べてS群で多く出現し、ERP測定中の期外刺激で誘発される不整脈はS群に比べてP群で多く観察され、dofetilideによる不整脈発生プロセスに与える麻酔薬の影響はpropofolとsevofluraneで異なることが明らかとなった。これらの結果は心筋の再分極過程制御機構に異常を来す患者に対する麻酔薬選択の留意点を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自開発したウサギ催不整脈モデルは麻酔薬の催不整脈作用特性の相違の検出に有用であり、本手法の活用により今後の検討を円滑に進めることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は吸入麻酔薬デスフルランの催不整脈作用特性を同様の手法で検討し、前年度までに検討してきた吸入麻酔薬セボフルラン、イソフルラン、ハロタンおよび静脈麻酔薬であるプロポフォールの結果と比較することで研究を完成させる。加えて、吸入麻酔薬存在下でQT延長により発生する致死性不整脈に対する治療薬の候補としてベラパミルの有用性を評価し、新たな治療法としての可能性を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)購入予定としていた消耗品が想定より安価に購入できたため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)本研究の遂行に必要な実験動物や試薬等の消耗品の購入に研究費を使用する。
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