研究課題
侵害受容の亢進による過剰な手術ストレス反応は、術後炎症レベルの上昇を招き、その結果、術後の合併症の発生率が増加する可能性がある。本研究の複数の目的の1つは、申請者が開発した手術中の侵害受容による生体反応をリアルタイムに数値化するNociceptive Response (NR)を用いてその評価を明確にするため、NRガイド下の全身麻酔管理が術後合併症発症に及ぼす影響について検討することである。令和5年度は、NRガイド下全身麻酔が、術後の転帰に影響を及ぼすという仮説を立て、腹腔鏡下腸手術が予定されている術前のC反応性タンパク(CRP)値が正常なASAクラスI/IIの成人患者において、単施設、二重盲検、無作為化試験を施行した結果について論文発表を行った。本研究では、患者を対照群とNR群のいずれかに無作為に割り付け、NR群では術中のNR指数を可能な限り0.85未満とした。主要評価項目は、術後のCRP血清濃度または術後30日の合併症発生率(Clavien-Dindoグレード≧IIと定義)である。結果は、対照群52例、NR群52例の計104例が登録され、NR群の術後1日目の血清CRP値は対照群より有意に低下し、術後合併症発生率もNR群(11.5%[95%CI、5.4-23.0])がControl群(38.5%[95%CI、26.5-52.0]、P = 0.002)より有意に低下した。以上より、腹腔鏡下腸手術における術中のNR値を指標とする全身麻酔は、術中の侵害受容を抑制し、術後の血清CRP濃度増加を抑制し、術後合併症を減少させる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
介入研究、観察研究共に順調に患者登録が進んでいる。
本研究の目的を達成するため、観察研究における患者登録数をさらに増やす予定である。
前年度に14,572円の未使用分が発生したため、文具等で使用する予定である。
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Medicine (Baltimore)
巻: 102 ページ: e34832
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