研究課題/領域番号 |
22K09060
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
王 鐸 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 産業医学基礎研究医員 (70899351)
|
研究分担者 |
吉田 安宏 産業医科大学, 医学部, 准教授 (10309958)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | サイトカインストーム / 好中球 / 粒子状物質 / 内因性物質 |
研究実績の概要 |
昨今、ウイルス感染時の過剰な炎症状態、サイトカインストームが注目された。感染が起きた初期は自然免疫が働き、好中球などがその場の炎症を司る。炎症を引き起こす要因としては、Toll様受容体(TLR)を介した細胞の活性化が関与するが、TLRに結合する物質は、外因性の物質に加え内因性の物質(例えばHMGB1やHSP)も寄与することが知られてきた。本研究ではサイトカインストームに繋がる感染症、更には自己炎症疾患におけるKey分子の探索を目的とし、将来的な予防や治療の開発に役立てる研究課題である。 先ず、本年度は研究計画に記載した過剰酸化ストレス誘導メタロチオネイン(MT)ノックアウト(KO)マウスを用いた検討を行った。貪食細胞が異物を取り込み、炎症が惹起されるが、申請者らが汎用してきた粒子状物質 (PM)をその異物として使用し、炎症初期に関与する好中球における炎症誘導について検討した。MT-KOおよび野生型マウスの炎症性好中球表面マーカーであるCD11bの発現レベルに、有意な差は認められなかった。MT-KO マウスの好中球は、野生型マウスからのものよりエンドサイトーシス能が高かった。MT-KOマウスの好中球は、エンドサイトーシスによって誘導される炎症性サイトカインTNF-αおよびIL-6の産生が、野生型マウスよりも高かった。以前報告したように、ダイナミン阻害剤は、野生型マウスおよび MT-KOマウスの両群で好中球におけるPMのエンドサイトーシスを阻害した。興味深いことに、NF-κBの活性化に関与するキナーゼIKKの阻害剤も阻害効果を発揮し、このパスウェイの何らかの関与が示唆された。また、インフラマゾームに関与するNALP3のKOマウスを樹立し、そのエンドサイトーシス能を検討した。IL-1βの産生は完全に消失したものの、PMのエンドサイトーシスには影響を及ぼしていなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の3つの柱のうち、2本について取り組み結果を得ることができたものの、一つの柱についてはまだ結果が得られていない。一方、粒子状物質 (PM) およびその他の炎症性物質をマウスに気管内投与するモデルには着手することができている。それ故、総じて計画通りのペースで進んでいると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
動物モデルは既に着手できているので、これらとin vitroのシステムを組み合わせた検討を行っていく計画である。特に、詳細な酸化ストレスと炎症マーカー(NF-κB)について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
少なからず今年度もオンサイトでの学会参加などに影響があり、その分を今年度に流用している。またサンプルを蓄積してからELISAキットなどの購入を検討したため。
|