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2022 年度 実施状況報告書

中脳辺縁ドパミン神経系の鎮痛機序とその可塑性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K09079
研究機関埼玉医科大学

研究代表者

小幡 英章  埼玉医科大学, 医学部, 教授 (20302482)

研究分担者 加藤 孝一  国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 ラジオアイソトープ管理室, 室長 (50382198)
須藤 貴史  群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (60739621)
紺野 愼一  福島県立医科大学, 医学部, 教授 (70254018)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード内因性鎮痛系 / 腹側被蓋野 / 側坐核
研究実績の概要

腹側被蓋野から側坐核にいたる中脳辺縁ドパミン神経系は、報酬効果だけでなく内因性鎮痛にも関与している。また神経障害性疼痛に代表される慢性痛状態では内因性鎮痛系が減弱することを申請者らは示してきた。本研究の目的は内因性鎮痛系としての中脳辺縁ドパミン神経系に着目し、その可塑性をラットの慢性痛動物で検討することである。当初の目的は3つあり、目的1では正常ラットの後肢にカプサイシンによる痛み刺激を加えた時に起こる鎮痛効果を判定する(Noxious stimulation induced analgesi:NSIA)。その時の中脳辺縁ドパミン神経系の活性化を免疫組織化学やドパミンの測定(HPLC)で判定する。目的2では慢性痛動物で同様の検討を行う計画を立て研究を進めてきた。2022年度においては、ラットの椎間板ヘルニアモデルにおいて検討をすすめた(福島県立医科大学整形外科との共同研究)。従来から知られているラットの椎間板ヘルニアモデルを作成し、さらにこの動物に身体拘束ストレスを加えた(6h/日を5回/週で4週間)。これによって椎間板ヘルニア作成から28日後でも下肢の疼痛閾値は低下したままで、慢性痛が継続することが明らかになった。さらにこの動物を用いて、下肢にカプサイシンを投与して痛みを与え、側坐核でのドパミン放出を非拘束群と比較したところ、拘束群ではドパミン減少が低下していた。このことから慢性痛動物では、中脳辺縁ドパミン神経系の機能不全が起こっていることが示唆された。一方で目的3ではラットの神経障害性疼痛モデル(Spinal nerve ligation: SNL)を用いて脳でのミクログリアの発現をPETで観察し、正常動物との比較を行っている(国立精神・神経医療研究センター、群馬大学麻酔科との共同研究)。これまでに各5匹ずつ撮影が終わっており、各群8匹まで増やす予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

目的3のラット脳ミクログリアのPET研究は非常に順調であり、各群の数が揃い次第解析を行うこととする。目的1と2に関して慢性痛モデルを用いた研究では、椎間板ヘルニアモデルを用いた研究は順調に進んでいる。一方で正常動物を用いた、痛み刺激に対する中脳辺縁ドパミン神経系の反応性の検討と、神経障害性疼痛モデル(SNL)を用いたその可塑性に関する研究は遅れている。研究全体として進捗状況を評価すると、おおむね順調に進んでいると思われる。

今後の研究の推進方策

2023年度も研究計画に沿って進める。目的1と2では慢性痛状態における中脳辺縁ドパミン神経系の可塑的変化について、正常動物との比較をすることで研究を進める。慢性痛モデルは、ラットの椎間板ヘルニアに身体拘束ストレスを加えた動物と、神経障害性疼痛のモデルであるSNLを用いる。中脳辺縁ドパミン神経系の可塑的変化については以下の方法で研究を行う。まずラットの後肢にカプサイシンを投与して痛み刺激を行う。その後、マイクロダイアライシス法による側坐核でのドパミン測定、c-fosの免疫染色によって腹側被蓋野のドパミンニューロンの興奮性の定量化などによって、中脳辺縁ドパミン神経系の痛みに対する興奮性を検討する。目的3に関しても研究計画に沿って進める。ラットの脳ミクログリアの発現を特異的トレーサー [11C]PBR28を用いてPETで定量化する、ラットSNLモデルの作成前、作成後2W、1M、2M、3M (12W後) に撮影して、正常ラットと比較する。これまでに各群5匹ずつの撮影が終了しており、各群8まで増やす予定である。その後に、脳地図を用いて脳の部位ごとにミクログリア発現量を定量化する。目的3においては特に腹側被蓋野・側坐核のミクログリアの発現を調べる。

次年度使用額が生じた理由

次年度に一部の研究費が持ち越されたことに関しては、正常動物を用いた、痛み刺激に対する中脳辺縁ドパミン神経系の反応性の検討と、神経障害性疼痛モデル(SNL)を用いたその可塑性に関する研究が遅れていることによる。申請者は2年前に所属施設を移動したが、それに伴い一部の研究は、まだ物品や人員の不足などによって稼働できない部分がある。それらの実験に関しては順次稼働する予定であるので、次年度以降はそのための研究費が必要となる。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Spinal γ-Aminobutyric Acid Interneuron Plasticity Is Involved in the Reduced Analgesic Effects of Morphine on Neuropathic Pain2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Tadanao、Suto Takashi、Ohta Jo、Saito Shigeru、Obata Hideaki
    • 雑誌名

      The Journal of Pain

      巻: 23 ページ: 547~557

    • DOI

      10.1016/j.jpain.2021.10.002

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The efficacy of duloxetine depends on spinal cholinergic plasticity in neuropathic pain model rats2022

    • 著者名/発表者名
      Kato Daiki、Suto Takashi、Obata Hideaki、Saito Shigeru
    • 雑誌名

      IBRO Neuroscience Reports

      巻: 12 ページ: 188~196

    • DOI

      10.1016/j.ibneur.2022.02.004

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Effectiveness of ultrasound-guided fascia hydrorelease on the coracohumeral ligament in patients with global limitation of the shoulder range of motion: a pilot study2022

    • 著者名/発表者名
      Kimura Hiroaki、Suda Masei、Kobayashi Tadashi、Suzuki Shigeki、Fukui Sho、Obata Hideaki
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 19782

    • DOI

      10.1038/s41598-022-23362-y

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Randomized active-controlled study of a single preoperative administration of duloxetine to treat postoperative pain and numbness after posterior lumbar interbody fusion surgery2022

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Tadanao、Fujita Nao、Suto Takashi、Suzuki Hideo、Tsukamoto Noboru、Ohta Jo、Saito Shigeru、Obata Hideaki
    • 雑誌名

      Medicine

      巻: 101 ページ: e32306~e32306

    • DOI

      10.1097/md.0000000000032306

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Duloxetineの術前投与が腰椎後方椎体間固定術術後痛やしびれ症状へ及ぼす効果の検討2022

    • 著者名/発表者名
      廣木忠直、藤田尚、鈴木英雄、塚本昇、須藤貴史、小幡英章
    • 学会等名
      日本麻酔科学会第69回学術集会
  • [学会発表] 下行性抑制系の機能回復による神経障害性疼痛の治療2022

    • 著者名/発表者名
      小幡英章
    • 学会等名
      第44回日本疼痛学会
  • [学会発表] 身体拘束ストレス下におけるラット髄核留置モデルでは、疼痛刺激後の側坐核におけるドパミン放出量は低下する2022

    • 著者名/発表者名
      渡辺剛広、関口美穂、小幡英章、紺野愼一
    • 学会等名
      第44回日本疼痛学会
  • [学会発表] 薬理遺伝的アプローチによる青斑核-内側前頭前野皮質の行動学的解析と慢性期神経障害性疼痛モデルにおける機能的変化2022

    • 著者名/発表者名
      太田淨、廣木忠直、須藤貴史、小幡英章、加藤房夫
    • 学会等名
      第44回日本疼痛学会
  • [学会発表] Spinal nerve ligation(SNL)術後早期から慢性期にかけての誘発痛・自発痛の時間経過2022

    • 著者名/発表者名
      須藤貴史、太田淨、小幡英章、齋藤繁
    • 学会等名
      第44回日本疼痛学会

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公開日: 2023-12-25  

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