研究課題/領域番号 |
22K09083
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
神谷 真子 朝日大学, 経営学部, 教授 (80181907)
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研究分担者 |
近藤 信夫 朝日大学, 歯学部, 教授 (40202072)
智原 栄一 朝日大学, 保健医療学部, 教授 (80244581)
村松 泰徳 朝日大学, 歯学部, 教授 (30247556)
高山 英次 朝日大学, 歯学部, 准教授 (70533446)
川木 晴美 朝日大学, 歯学部, 教授 (70513670)
梅村 直己 朝日大学, 歯学部, 講師 (80609107)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ミダゾラム / IL-10 / IFN-γ / IL-2 / がん関連線維芽細胞 / 間質細胞 |
研究実績の概要 |
本研究ではがん関連線維芽細胞(CAF)を中心としたネットワークにおける鎮静・麻酔薬の作用を明らかにすることを目的とし、独自に作出した試験管内共培養系と担がん動物モデルとを用いた解析を計画した。 初年度は、まず試験管内共培養系を用いて、鎮静麻酔薬の一種であるミダゾラムが、がん細胞、CAF、リンパ球のそれぞれ、あるいはこれら細胞間の相互作用におよぼす影響をサイトカインレベルで解析した。その結果、ミダゾラムがマウス脾細胞への直接効果として、報告済みのインターロイキン(IL)-10産生能特異的な阻害効果に加えて、IL-2産生能をも強く抑制することを示す以下の知見を得た。 抗CD3抗体刺激脾細胞のIL-2産生能に対するミダゾラムの効果は、IL-10産生能に対する効果発現と同様にごく低濃度(5μg/ml)から観察され、IL-10に対する効果に匹敵する強い抑制効果を発揮した。そこで、IL-2およびIL-10産生をタンパク質レベルで経時的に追跡し、ミダゾラムの添加効果を比較した。IL-2産生に対するミダゾラムの抑制効果は、刺激後早期から48時間後まで継続的に観察されたのに対し、IL-10産生に対する効果は、刺激後24時間以降に集中していた。さらに、両サイトカインmRNA量の経時的変化に対するミダゾラムの効果も、タンパク質レベルと同様に異なっていた。すなわち、IL-2 mRNAの転写量は刺激後48時間まで終始、対照群の50%前後を推移していが、IL-10 mRNA発現に対する抑制効果は刺激から48時間後に特に強まり対象群の約20%にまで低下させた。 以上の結果から、低容量のミダゾラムは、刺激脾細胞のIL-2産生に対して、タンパク質レベルのみならず、転写レベルでも強い抑制効果を有しているが、その抑制機構はIL-10の抑制とは異なる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ミダゾラムがマウス脾細胞のサイトカイン産生能に与える効果に関しては、新たにIL-2産生阻害効果を発見するなど、順調に進んでいる。しかし、その一方で、OSCC担癌マウスからCAFのモデル細胞を得ようと試みたが、樹立に至っていない。 その理由の一つは、研究室の超低温フリーザーが不調で、単離した細胞の保存がうまくいかなかったためである。 代わりの超低温フリーザーが調達できたので、来年度、再度採取・保存を試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度、移殖OSCC組織内からCAFのモデルとなる線維芽細胞の単離・保存を試みる予定である。 一方、リンパ球への直接効果については、現在「ミダゾラム」「プロポフォール」の影響を中心に観察しているが、同じく周術期や歯科診療の場でも汎用されている「デクストメデトミジン」についても、マウス脾細胞あるいはそこからTリンパ球を単離し、IL-10, IL-2およびIFN-γ産生能への影響を中心に検討を加える。 CAFの採取と、リンパ球への鎮痛・麻酔薬の直接作用の知見の蓄積がある程度進んだのちに、OSCC-CAF-リンパ球の試験管内共培養系を用いて、その相互作用にあたえる鎮痛・麻酔薬の影響の解析へと進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
第64回歯科基礎医学会における成果発表のため、徳島市への出張を予算として計上していたが、台風接近のため分担研究者のほとんどが出張を取りやめたうえ、学会自体も開催期間が短縮されてしまった。このため、成果発表のための旅費が少額となった。 一方、試験管内共培養系を用いた解析において、条件設定の工夫と培養系のスケールダウンを試み、良好な結果が得られたため、抗体等の高額な試薬代が節約できたことも理由の一つである。 次年度に繰り越した資金は、動物実験や脾細胞からのTリンパ球採取キットの購入などにも活用する予定である。
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