研究実績の概要 |
52名の人工心肺を要する心臓血管手術を受けた成人患者を対象とし、周術期の血清シンデカン-1濃度を測定した。グリコカリックスと血糖管理、ならびに術後急性腎障害との関係を術前に透析を受けていた患者、術前の血清クレアチニン濃度が2.0mg dl-¹を超えた患者、下行大動脈を含む手術を受けていた患者は除外した。術後急性腎障害は18例(34.6%)で発生した。血清シンデカン-1濃度はCPB開始後に上昇し、二峰性のピーク値を示した。すべての時点における血清シンデカン-1濃度は麻酔導入後と比較して有意に上昇していた。CPB離脱30分後および術後1日目の血清シンデカン-1濃度はpAKIの発生と関連していた(OR=1.10 [1.01 to 1.21], P=0.03; OR=1.16 [1.01 to 1.34], P=0. 04]。pAKIをもたらす血清シンデカン-1濃度のカットオフ値は、101.0 ng/ml (感度=0.71、特異度=0.62、曲線下面積(AUC)=0.67(0.51~0.83))および57.1 ng/ml (感度=0.82、特異度=0.56、AUC=0.71(0.57~0.86))であった。多変量ロジスティック回帰分析の結果、術後1日目の血清シンデカン-1濃度はpAKIの発生と関連していた(OR=1.02 [1.00 to 1.03]; P=0.03)。 周術期血糖値の平均値は153.4mg/dlであり、今後、血糖推移とグリコカリックス値の推移との関係、血糖推移とグルコカリックス値の推移とAKIリスクの関係に関して解析する予定である。
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