研究課題/領域番号 |
22K09099
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
澤田 敦史 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10551492)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 妊娠鎮痛 |
研究実績の概要 |
妊娠を契機に神経障害性疼痛患者の痛みが和らぐ事象が報告されており,妊娠鎮痛と呼ばれている.前帯状皮質は中枢神経における痛み伝導路の一部を形成し,慢性疼痛の病態形成に深く関わっている.また,妊娠鎮痛には脊髄後根神経節のδオピオイド受容体の発現増加が関与することが報告されている.今回,我々は前帯状皮質におけるオピオイド受容体の発現増加が妊娠鎮痛の形成機序に関わると仮説を立て検証した. 【方法】妊娠および非妊娠雌マウスを用いて神経障害性疼痛モデル(Seltzerモデル)とシャムモデルを作製し,ウエスタンブロッティング法により前帯状皮質におけるオピオイド受容体の発現を測定した(n=6/各群).また,発現増加が確認されたオピオイド受容体の拮抗薬を妊娠鎮痛モデルマウスの前帯状皮質に投与し,患側肢の触刺激に対する逃避行動の閾値を測定した(n=8/各群).統計処理はrepeated-measures ANOVA with Tukey’s testを用いて,p<0.05を有意とした. 【結果】非妊娠雌マウスと比較して,妊娠雌マウスの前帯状皮質におけるδオピオイド受容体の発現が有意に増加した(p=0.002).μおよびκ受容体の発現に有意差は認めなかった.また,δオピオイド受容体の拮抗薬であるナルトリンドールを前帯状皮質に投与した妊娠鎮痛モデルマウスにおいて,触刺激に対する逃避行動の閾値が有意に低下し妊娠鎮痛の減弱がみられた(p<0.001). 【考察】本研究の結果から,前帯状皮質におけるδオピオイド受容体の発現増加が妊娠鎮痛の機序形成に関与することが示唆された.今後はδオピオイド受容体の遺伝子を搭載したウイルスベクターを用いて,雄マウスを用いた神経障害性疼痛モデルの前帯状皮質の神経細胞に形質導入を行い,前帯状皮質のδオピオイド受容体の発現増加が神経障害性疼痛を改善するかを検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者はこれまでに妊娠鎮痛モデルマウスにおいて前帯状皮質のδオピオイド受容体の発現増加を明らかにした.さらにδオピオイド受容体の拮抗薬であるナルトリンドールを前帯状皮質に投与することで妊娠鎮痛が減弱することを明らかにしており,妊娠鎮痛の機序の一端を解明することができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後はδオピオイド受容体の遺伝子を搭載したウイルスベクターを用いて,雄マウスを用いた神経障害性疼痛モデルの前帯状皮質の神経細胞に形質導入を行い,前帯状皮質のδオピオイド受容体の発現増加が神経障害性疼痛を改善するかを検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はウエスタンブロッティングの消耗品の購入が主な支出となった.次年度は雄マウスを使用した神経障害性疼痛モデルマウスを使用して,前帯状皮質におけるδオピオイド受容体の発現増加が神経障害性疼痛を緩和するかどうかについて検討する予定である.
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