研究課題/領域番号 |
22K09101
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
末盛 智彦 自治医科大学, 医学部, 准教授 (10509441)
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研究分担者 |
竹内 護 自治医科大学, 医学部, 教授 (60284113)
多賀 直行 自治医科大学, 医学部, 准教授 (20346456)
永野 達也 自治医科大学, 医学部, 講師 (00534158)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 先天性心疾患 / 近赤外線時間分解分光法 / NIRS / モニタリング |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、先天性心疾患患者における肺・体循環バランス状態を近赤外線時間分解分光法(TD-NIRS)を用いて非侵襲的に評価する方法を開発することであり、研究計画は3段階で構成される。第1段階の「安定してTD-NIRSを測定するための方法確立」はすでに終了しており、先天性心疾患患者の肺・脳組織ヘモグロビン濃度を安定して測定することが可能である。しかし、研究を進める過程で本研究に使用するTD-NIRS機器と従来使用していたCW-NIRS機器の間に脳組織酸素飽和度測定値の大きな乖離があることが分かり、測定データの信頼性と臨床使用上における安全性への懸念が生じたため、両機種の測定値比較研究を行った。その結果、両機種間には組織酸素飽和度の計算アルゴリズムと較正方法の違いに起因すると思われる組織酸素飽和度測定値の乖離があるものの、本研究に使用する組織ヘモグロビン濃度測定値には影響が少ないため、研究計画に支障を来さないと判断した。現在は、第2段階の「患者の静的状態を評価する方法としてのTD-NIRSの有用性検討」を行っている。これはTD-NIRSで測定した肺・脳組織ヘモグロビン濃度から肺・体循環バランス状態を評価する試みであるが、前年度は単心室症候群患者において肺・脳組織ヘモグロビン濃度変化が患者の肺・体循環バランス状態を良好に反映していると思われる症例を論文として報告した。現在はさらに対象疾患、症例数を増やして検討を行っている。第3段階の目標は「患者の動的状態を評価する方法としてのTD-NIRSの有用性検討」を行うことであるが、これは肺・脳組織ヘモグロビン濃度と動的循環指標(血圧、動静脈酸素飽和度など)の関連性を評価する計画であり、現在はデータ収集の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】に示したように、研究を進める過程でTD-NIRS機器の測定信頼性に疑義が生じたため、CW-NIRS機器との比較研究を行った。当初予定していなかった研究が追加されたため、前年度の進捗状況は「やや遅れている」と報告したが、その結果は組織ヘモグロビン濃度測定の信頼性を損なうものではなく、これまでに得られた測定データも本研究に使用可能であると判断した。現在も測定は予定通りに進められており、進捗状況はおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在は研究計画の第2段階を中心に進めており、対象心疾患、症例数を増やして検討を進めている。本年度中は個別症例における検討と症例報告を予定しているが、年度末には収集されたデータを用いて肺・脳組織ヘモグロビン濃度比率と肺体血流比率(Qp/Qs)の関連性の統計解析を行い、TD-NIRSを用いて静的な肺・体循環バランス状態を評価する方法の有用性を検討する予定である。第3段階についても、麻酔中の肺・脳組織ヘモグロビン濃度と患者の動的循環指標を同時にサンプリングするシステムは構築できているため、本年度中にデータ収集を開始する予定であり、来年度中までに統計解析を開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用する消耗材(プローブファイバー、ディスポーザブルパッドなど)の消費が想定を下回ったため、次年度使用額が生じました。次年度以降は、研究の第2段階、第3段階が本格化する見込みのため、消耗材の追加購入と解析用コンピューターの導入に使用する予定です。
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