研究課題/領域番号 |
22K09105
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研究機関 | 明治国際医療大学 |
研究代表者 |
林 和子 明治国際医療大学, 臨床医学講座, 客員講師 (40285276)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 超低周波 / 脳波 / 複雑系 / 非線形解析 / 徐派振動分析 |
研究実績の概要 |
麻酔や睡眠中、脳は皮質安静時膜電位の動態が変化することで生じるゆっくりとした1Hz以下の緩徐振動(slow oscillation)を生じ、それぞれ数百ミリ秒持続する活動期間(UP状態) と沈黙期間(DOWN状態)を交互に繰り返す. この緩徐振動は、アップとダウンの間で振動する皮質の集合体が同期協調することで生じ、第5層皮質ニューロンやアストロサイト、抑制性皮質介在ニューロンを介して生成され、皮質視床構造やその他の皮質下の脳構造を巻き込み、皮質集合体を同期協調させながら皮質表面を伝播することが知られる.麻酔の主要な作用機序の一つは、このUP/DOWNの動態、即ち皮質膜電位水準に直接介入することである。また、この緩徐振動の根底にある基本的な神経細胞のダイナミクスは、皮質回路における複雑な因果関係を有する相互作用を崩壊させる主要機構であり、画一的なダウン状態の発生がニューロン相互作用の連鎖を断ち切り、広範囲な分化を兼ね備えるパターンの出現を阻む。従って、このアップ/ダウン間の振動の双安定性動態が、神経ネットワークの複雑性を反映することが想定される。つまり、緩徐振動中の複雑度の低下は、皮質の非線形ダイナミクスの同期がUp/Down状態の切替え現象に相互に影響されることに由来する。一方、複雑性は意識状態で高く、意識がフェードアウトするときに低下することが報告されてきたが、それは、意識状態で高レベルの興奮性が回復し、より多様な時空間パターンとより速い活性波が生じるためである。このように、緩徐振動のダイナミクスが、複雑性にどのようにかかわるのかを検討することで、緩徐振動の麻酔モニタリングとしての有用性を明らかにできる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、医療従事者のコロナ感染症対策のため、逼迫した状況が続き、臨床研究の実施が困難な状況であった。そこで、論文等から、知識を深め、今後の研究展開に役立てることに終始した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、脳波収集とその低周波解析を実施し、更に複雑性解析を加えて、脳波の麻酔薬の影響と覚醒意識等との関係を明らかにしてゆきたい
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次年度使用額が生じた理由 |
引き続き、新型コロナウイルス感染禍で、臨床が多忙を極め、麻酔管理中の新しいデータ収集や臨床研究の実施が困難であった。そのため、次年度使用額が生じた。ようやく、収束に向かってきたので、次年度より、研究活動を再開したい。
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