研究実績の概要 |
ARDSの発症機序として、neutrophil extracellular traps (NETs)由来のDNAに結合したprotease、histone、血小板血栓などが細胞障害を惹起していると考えられる。ARDSに対する治療戦略として、これら攻撃因子に対する炎症制御が、主に検討され治療応用されている。しかしながら、防御因子を高める治療戦略である、再生・修復促進に関しては、検討が行われていない。骨髄幹細胞は、組織低酸素、組織障害時にサイトカイン等の刺激で骨髄から障害組織に急速にホーミングされ集積する。障害部位にホーミングした幹細胞は、抗アポトーシス、抗酸化ストレス、抗炎症作用を発揮し、障害細胞の再生・修復機能を担っている。本研究は、骨髄からの前駆細胞の動員、前駆細胞動員に関与する液性因子濃度と肺酸素化との関連をヒトのARDSで検討する。 対象は、敗血症性ARDSの成人で、診断後1、3、5、7、14日目に各々4mlずつ採血し、末梢血中幹細胞数、VEGF、GM-CSF、CXCL12、soluble Tie2受容体, angiopoietin 1-2, VEGF受容体1-2、PDGF、血中遊離トロンボモジュリン、syndecan-1、好中球CD64発現量、MPO-DNA, NE-DNA, 内皮細胞由来microparticle (EMP)、炎症反応を測定する。BALFにおいては好中球数、好中球エラスターゼ-DNA、MPO-DNA, 好中球CD64発現を測定する。 現在、NETs産生量の指標になりうる血液中のMPO-DNA, NE-DNA, cell-free (cf)-DNAの測定系を確立するための基礎実験を開始している。cf-DNAは、Qubit3蛍光光度計を用いて順次測定を行っている。MPO-DNA, NE-DNAは、96穴マイクロプレートに、抗MPOおよび抗NEモノクローナル抗体を固着させたのちマイクロプレートリーダーで測定するサンドイッチELISA法を用いて測定する予定にしている。
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