研究課題/領域番号 |
22K09149
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
松田 弘美 北里大学, 医学部, 講師 (00525743)
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研究分担者 |
伊藤 義也 北里大学, 医学部, 准教授 (40203187)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ARDS / RAMP1 / 神経ペプチド |
研究実績の概要 |
急性呼吸促迫症候群(ARDS)はサイトカインストームによる肺胞全体への炎症波及と血管透過性亢進性肺水腫のために呼吸不全に至る予後不良な疾患である。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、炎症刺激などによって遊離される神経ペプチドで、CGRP受容体サブセットである受容体活性調節蛋白1(RAMP1)を介して抗炎症作用を示す。本研究ではRAMP1シグナルの抗炎症性作用が急性肺障害に対して防御的な役割を果たすかを明らかにすることを目的とした。9~10週令の雄性RAMP1欠損マウス(KO)および野生型マウス(WT)を用いた。麻酔下に大腸菌由来LPSを気管内投与して急性肺障害を誘導し、ARDSモデルを作成した。経時的に肺組織および気管支洗浄液(BALF)を採取して肺障害を比較検討した。LPS投与168時間後の生存率はWTで100%、KOで60%だった。72時間後のBALF中のタンパク量、炎症性サイトカイン(TNF,IL-6)、好中球数は、WTよりKOで増加した。クロドロン酸投与により肺胞マクロファージを枯渇させると,コントロール投与と比較して72時間後のBALF中のタンパク量、炎症性サイトカイン、ケモカイン、好中球数がWT,KOともに増加した。単離肺胞マクロファージをLPSで刺激するとサイトカイン産生はWTよりKOで増加した。LPS誘導性急性肺障害では,RAMP1シグナルは肺胞マクロファージからのサイトカイン、ケモカイン産生を阻害し好中球集積ならびに肺血管透過性亢進を抑制することでARDSに対して保護的作用を示す可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が、当初に立案した実験計画に沿って、ほぼ順調に遂行されている。マウスARDSモデル(LPS誘導急性肺障害モデル)を用いて、肺胞マクロファージRAMP1シグナルの防御的役割を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の実験計画に沿って、本研究を進めていく。急性肺障害においてRAMP1シグナルが防御的効果をしめすメカニズムを、細胞移入実験や培養骨髄マクロファージ刺激実験などにより解明する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった消耗品の納入が海外受注生産のために間に合わなかったことから次年度に繰り越した。さらに研究進展により、実験動物を多数使用する予定となり、このための動物飼育費用のために予算額を取り分ける必要が生じた。これらに加え、来年度では実験動物関連と細胞培養関連を中心とした消耗品の補充及び実験動物の購入費に充てる予定である。
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