研究課題/領域番号 |
22K09165
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
成松 英智 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70295343)
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研究分担者 |
沢本 圭悟 札幌医科大学, 医学部, 助教 (10597529)
石黒 雅敬 札幌医科大学, 医学部, 助教 (30404586)
高橋 和伸 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40530605) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 温度環境 / 脳保護作用 / 興奮性シナプス伝達 / EPSP / 海馬スライス / アデノシン受容体 |
研究実績の概要 |
令和4年度<海馬CA1-錐体細胞興奮性シナプス伝達に対する温度の影響> 令和4年度は,本研究計画の基本データとなる海馬スライスCA1-錐体細胞興奮性シナプス伝達に対する温度変化の影響の検証を行った.細胞外電位同時多点記録法(MEA system)を用いて,樹状突起上のEPSPを反映するfield EPSP(以下,fEPSP)および神経細胞体上の活動電位を反映するpopulation spike(以下,PS)を同時記録し,シナプス伝達の指標として解析した.スライス標本の温度は,浸漬灌流液の温度を灌流液流入部および灌流槽の温度を精密に制御することにより調節した. 温度変化により各スライス標本のPSとfEPSPは,ほぼ並行して増減した.PS amplitude(0.1Hz),fEPSP slope(0.1Hz)およびこれらの長期増強(Long-term potentiation: LTP,0.1Hzでのコントロール取得に続くLTP刺激の後,0.1Hzで60分間記録)は,37℃(正常体温)から温度低下とともに徐々に増大して30℃(低体温領域)で最大を示した後,それ以下(超低体温領域)への温度低下により逆にコントロール以下まで減少した.特に23℃においてPSおよびfEPSPは,LTP刺激により直後に増強した後,短時間のうちに低下し初期値を下回り記録終了まで継続的な減少を示した. 以上の成績はフィールド電位で観察された海馬CA1-錐体細胞興奮性シナプス伝達は,正常体温(37℃)からの温度低下により30℃まで増強した後,それ以下では抑制されることを示す. これらに加え,上記PS,fEPSPおよびLTPの温度依存性変化に対するAdenosineおよび各種adenosine受容体作動薬の影響の検証も一部開始している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画初年度である令和4年度には,本研究のコントロールとなる海馬スライスCA1-錐体細胞興奮性シナプス伝達に対する温度変化の影響の基本データを取得することができた.今後温度依存性シナプス伝達変化に対するadenosine系の関与の検証を進めていくにあたり,令和4年度に得られた高精度かつ高い再現性のデータは,来年度以降の研究の精度に有益な影響を及ぼすと考える.また,実験・研究環境もコロナ禍以前の状況に戻りつつあり,現段階では良好である.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度までの実験で上記データが得られたため,本研究計画2年目となる令和5年度では,海馬スライスCA1-pyramidal cellを用いて,脳障害モデルのうち虚血性および低酸素性脳損傷モデルにおける低体温の脳保護的影響と,これに対するadenosine系の関与の解明を進める.具体的には,低体温の脳保護的影響に対するadenosine A1およびA2a受容体の作動薬および遮断薬の影響を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度の研究計画の一部を令和5年度に繰り越したため,次年度使用額が発生した.令和5年度の消耗品費および旅費に使用予定である.
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