研究課題/領域番号 |
22K09168
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
田村 哲也 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (90381889)
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研究分担者 |
青山 峰芳 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (70363918)
青木 啓将 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 助教 (70881845)
祖父江 和哉 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (90264738)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ミクログリア / 低体温療法 / 蘇生後脳症 / エリスロポエチン / エリスロポエチン受容体 |
研究実績の概要 |
蘇生後脳症モデルラットの作製を行なった。Rice vannucchi法に従い、生後7日齢ラット左総頚動脈結紮の後に低酸素負荷を加えることで一側性に脳傷害を誘導できた。モデルラットに実験的低体温療法を施した後、フローサイトメトリー(FACS)を用いたミクログリアの分取を試みたが、FACSの過程でミクログリアを含む神経系細胞の生存率が大幅に減少し、十分な細胞数を分取することができなかった。そこで、immunopanning法による分取を行なった。immunopanning法は細胞表面マーカー抗体で標識した後、2次抗体をコーティングしたペトリディッシュに播種することで分取する方法である。分取したミクログリアについて、細胞種特異的遺伝子の発現解析により特異的な分取に成功したことを確認した。遺伝子発現解析の結果、傷害性因子であるiNOSや炎症性サイトカインの発現が強く誘導されていた。さらに、低体温療法群ではこれらの傷害性因子の発現誘導が抑制された。一方で、抗炎症性サイトカインの発現は低体温療法により誘導された。これらの遺伝子変化は脳組織をバルクで解析した際には検出できなかったものであり、ミクログリアを分取して解析することに大きな意義があった。EPORの遺伝子発現解析の結果、モデルラット由来のミクログリアではEPOR発現が減弱し低体温療法により発現が回復する傾向がみられた。よって、低体温療法とEPO投与を併用することで脳保護効果を増強できる可能性が考えられた。 初代培養ミクログリアに虚血再灌流モデル刺激を加えてEPORの発現解析を行なった。同様にEPOR発現減少傾向がみられたが、モデルラットの結果と比較すると変化は小さく、EPORの発現減少には虚血再灌流がミクログリアに直接与える影響と、ミクログリア以外の細胞から放出される液性因子の両方が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画と比較して、細かい変更は多々あるものの、蘇生後脳症モデルラットを作成し、それを使用した低体温療法による低結果も出てきている。ミクログリアのエリスロポエチンの受容体の発現変化などにも違いが発見できており、全体としては順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の研究で明らかとなった低温条件下におけるEPORの発現変化に着目して検討を行う。 蘇生後脳症モデルラットの脳組織染色によりEPORのタンパクレベルでの発現変化を解析する。EPORはミクログリアだけでなくニューロンやオリゴデンドロサイトにも発現していることから、これらの細胞種特異的マーカーと組み合わせて発現量の変化を解析する。より定量的な解析としてWestern blotやFACSによる発現解析も計画している。さらに、低体温療法によりタンパクレベルでEPOR発現の回復の有無を確認する。これによりEPO投与に適切と思われるタイミングを吟味した後、低体温療法との併用効果の解析に移行する。 EPOR発現変化を引き起こすシグナルを同定するために、RNA-seqによる網羅的解析を行なう。immunopanning法により分取したミクログリアと初代培養ミクログリアとの遺伝子発現変動のパターンを比較することで、直接効果と間接効果に分けて解析を進める。候補として抽出したシグナルについてWestern blotで解析を行なう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度はin vivoの実験を行う予定であり、ラットの購入に使用する予定。
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