研究課題/領域番号 |
22K09192
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
近藤 豊 順天堂大学, 大学院医学研究科, 先任准教授 (90642091)
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研究分担者 |
田中 裕 順天堂大学, 大学院医学研究科, 教授 (90252676)
岡本 健 順天堂大学, 医学部, 教授 (40347076)
末吉 孝一郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90648297)
平野 洋平 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70621895)
石原 唯史 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70648295)
三好 ゆかり 順天堂大学, 医学部, 助教 (90906611)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 敗血症 / AMP / 集中治療後症候群 / 人工冬眠 / 筋萎縮 / ICU |
研究実績の概要 |
本研究は予後不良な敗血症に対してアデノシン一リン酸(AMP)投与をおこなうことにより、敗血症回復後の脳・身体機能低下を防ぐことを目指すものである。身体機能に関わる骨格筋に注目し、初年度の実験をおこなった。生後8-10週齢のC57BL/6マウスに盲腸結紮穿孔術(CLP)を行い、AMP投与の有無によりその効果を比較・検討した。CLP処置から、5日後にマウスのヒラメ筋、前脛骨筋、腓腹筋、長趾伸筋を摘出し、機能形態的・分子学的評価をおこなった。組織染色をおこない筋断面積にて形態的変化を評価した。マウス用握力計を用いて前肢握力を計測したところCLP処置後3日以降で減少していたが、AMP投与により回復が認められた。さらに後肢の前脛骨筋の筋重量はCLP処置後5日目で減少していたが、AMP投与により増加が認められた。 さらにマウス筋芽細胞であるC2C12細胞を用いてvitro実験をおこない、AMPの効果を検討した。まず筋芽細胞を筋管細胞に分化させ筋多核細胞とし、その後、エンドトキシン刺激に加えた。さらにAMP刺激の有無で群分けし、インキュベーターにて48時間培養した。その後、筋芽細胞のミオシン成分と核に対して、免疫染色をおこなった。結果、筋管細胞の核融合数、筋管面積、筋管幅が減少したが、AMP刺激により回復が認められた。 これらの初年度の結果により、敗血症においてAMPが骨格筋萎縮の改善効果があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおりに実験を進められており、概ね仮説を裏付ける結果が得られている。そのため研究計画の大幅な変更はなく、順調に進展している。次年度も実験計画に沿って、さらなる実験をおこなう。
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今後の研究の推進方策 |
敗血症に対するAMPの作用に関して、マウスを用いた動物実験・マウス筋芽細胞を用いたvitro実験では概ね仮説に矛盾しない実験結果が得られた。しかしながらAMPによる骨格筋保護作用の詳細なメカニズムが未だ不明である。そのためウエスタンブロット法を用いたマウス筋組織中のタンパク発現原価、リアルタイムPCRを用いた筋組織中のRNA発現原価、プロテオーム解析による血漿タンパクの変化、を調べる予定である。 加えて、初年度における今までの実験では敗血症の脳に対する影響が調べられていない。そのためマウス脳組織・培養脳細胞を持いて、敗血症における脳機能を今後実験・解析する。近年では筋組織から放出されたサイトカインが脳に影響を与えることも報告されている(Lang CH. IMPORTANCE OF THE INNATE IMMUNE RESPONSE IN SKELETAL MUSCLE TO SEPSIS-INDUCED ALTERATIONS IN PROTEIN BALANCE. Shock. 2023 Feb 1;59(2):214-223. )ことから、筋組織のサイトカイン放出による脳への影響も合わせて評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね計画どおりに進んでおり、ほぼ予算どおりの執行となった。6113円のみが初年度繰り越しとなったが、次年度の消耗品代として使用予定である。
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