本研究課題は、治療困難な悪性腫瘍の代表である膠芽腫、そして可能であればその幹細胞を標的として、神経伝達物質とその受容体を作用点とした切り口で新規治療方法の開発を狙っていくものである。神経伝達物質の中でもメラノコルチンとその受容体と作動薬のBremelanotideのドラッグリポジショニングを中心に研究を行っている。 昨年度の成果として、膠芽腫および婦人科上皮癌でのメラノコルチン受容体を標的とした抗癌作用の知見や、上皮間葉移行に焦点をあてた知見を中心としたデータを得ることが出来たことを報告した。 今年度あらたに①膠芽腫や上皮癌だけでなく他の「非」上皮性腫瘍における知見を得るとともに、②シグナル伝達系の関与に関する所見などを得ることができた。 ①臨床上重要な位置を占める「非」上皮腫瘍の代表として非円形肉腫が挙げられるが、その代表的細胞株T778を用い、メラノコルチン受容体の役割や治療標的としての位置づけについて膠芽腫に近しい結果を部分的に得ることができた。具体的には、抗腫瘍効果の中でも抗アポトーシス経路が重要な働きを担っているだけでなく、分子Xがキープレイヤーとして働いている点など膠芽腫における結果をバリデートしつつ、他腫瘍への展開の足場となりうる重要な結果であるといえる。 ②腫瘍の進展におけるメラノコルチンの関与する系として、今年度あらたにAkt pathwayの関与を見出すことができた。この作用点を切り口にmTOR阻害剤の併用やcross-talkのある他経路の標的化など、新たな抗腫瘍戦略につなげていきたいと考えており、次年度の研究課題のひとつとしている。
|