研究課題
申請者はこれまでの研究を通じて、IDH 変異がNAD+合成経路に関わる律速酵素NAPRTの発現を抑制することで生理的な細胞内NAD+低下を引き起こすこと、さらには別の合成経路の律速酵素であるNAMPTを阻害することによる合成致死的な腫瘍制御法を見出した。またNAD+は細胞老化抑制に働くSIRT1やDNA修復酵素PARPの補酵素であることから、これらの酵素の活性化を促進させる治療により、NAD+枯渇を通じた強力な抗腫瘍効果が生じることを見出した。このDNA修復機構変化がIDH 変異神経膠腫において高率に生じる、temozolomide (TMZ)治療後のDNA高変異状態 (DNA hypermutation, HM)化と腫瘍の悪性化に関与しているものと仮説を立てている。申請者らはこれまでの研究を通じて世界最多レベルの患者由来IDH 変異神経膠腫細胞株 (patient-derived xenograft; PDX) の樹立に成功しており 、本研究ではIDH 変異神経膠腫を対象とし、自身らが独自に樹立した世界最多レベルのIDH 変異神経膠腫細胞株を用いて、TMZ治療後に生じるHM化と付随する悪性転化促進機序の解明を図るとともに、IDH 変異神経膠腫の悪性転化を回避する治療法を創出すること、また既にHM化を呈したIDH 変異神経膠腫に対する治療アプローチとして、HM化を標的とした新規治療法の開発を研究目標に掲げている。具体的には内因性および外因性(樹立細胞株を用いて)TMZ治療後のHMモデルの作成に成功しており、同細胞株のmismatch repair functonが失活していること、TMZに対する耐性化を確認している。これらのモデルに対して現在網羅的薬剤スクリーニングを通じて標的分子の探索を進めており、今後有力な分子が同定された時点で動物実験に移行する予定である
2: おおむね順調に進展している
ほぼ想定通りの計画で遂行している
同定した治療標的分子を阻害する薬剤を用いて動物実験を予定している。有効性が確認された時点で詳細な分子機構を解明し論文投稿を図る予定である
他の研究費との兼ね合いもあり、一部研究費が残った。研究費残額は繰越の上次年度網羅的遺伝子解析や動物実験などを中心に予算計画をたてている。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件、 招待講演 10件)
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