研究実績の概要 |
本研究対象の脳腫瘍の中の、グリオーマは再発、悪性化しやすく、その都度、腫瘍組織を採取して遺伝子解析を行うには人的侵襲が大きい。そこで、最近は組織採取の代用として、低侵襲で脳脊髄液中の腫瘍由来の circulating cell free DNA(ccfDNA) の遺伝子解析を行うことが発達してきている。しかしながら、脳脊髄液由来の ccfDNA は極めて微量であり、遺伝子解析可能な例は限定されているのが現状である。我々は、グリオーマ患者の脳脊髄液中の ccfDNA を in vitro で増幅し、高感度なassay によりグリオーマ関連遺伝子の統合的解析を効率的に行う方法を確立することを試みた。今回、グリオーマ症例の腰椎穿刺で得られた髄液1mlから、Maxwell RSC instrument を用いて腫瘍由来ccfDNAを抽出、精細した。IDH1, H3F3A各遺伝子の変異のホットスポット部位を high resolution melting (HRM) 法で、TERT遺伝子変異については droplet digital PCR 法で、MGMTプロモーターのメチル化についてはメチル化特異的HRM法にて解析した。通常のccfDNAは極めて微量であり、解析不能であったサンプルに対しては、GenomiPhi kit を用いてDNAを増幅し、同様のassay法で解析した。 尚、IDH1, H3F3A, BRAFv600 遺伝子変異の有無については、HRM法の増幅サイクル数を通常よりも10サイクル増加させることで、全例で当該遺伝子変異を検出し得た。以上の増幅方法を用いることで髄液を用いた Liquid biopsyの可能性を高められると考えられた。さらなる、工夫を重ねて、より多数のグリオーマ関連遺伝子解析を進めている。
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