研究課題
がんの再発や転移の原因として、がん幹細胞の存在が注目されている。がん幹細胞は、自己複製能と通常のがん細胞への分化能を備え、治療に抵抗性を示す。そのため、がん幹細胞を標的とした治療薬の開発が世界中で行われている。脳転移巣には脳指向性をもつがん幹細胞が集積している。アンメット・メディカル・ニーズが高い転移性脳腫瘍に対する新たな治療法の開発が望まれている。ペプチドワクチン療法は、免疫アジュバント、Tリンパ球を誘導させる手法、免疫の効果判定などの基盤的な技術開発が急速に進んでいる。脳腫瘍に対する免疫療法は相当数の臨床試験が行われている。しかしながら、EGFRvIIIペプチドワクチン療法は、EGFRvIII陽性の初発悪性グリオーマに対する第III相臨床試験において、全生存期間を延長できなかった。このように、ペプチドワクチンが標準化されていないため、開発が困難になっている。本研究は、新たなネオアンチゲンを探索するために、グリオーマ、転移性脳腫瘍、および肺癌由来のがん幹細胞(計22株)における遺伝子発現をRNAシーケンスで網羅的に解析した。そしてすべての症例に共通する、がん幹細胞に特異的なネオアンチゲンとして、ECT2とUBE2Tを同定した。これらについて遺伝子変異を解析した結果、がん幹細胞ではUBE2Tのタンパク質間相互作用に関わるアミノ酸に変異があった。さらに免疫学的手法を用いて、がん幹細胞はUBE2Tがコードするタンパク質を発現することを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
がん幹細胞に特異的なネオアンチゲンを同定し、機能喪失に関わる変異を発見した。
病理組織標本を用いて、ネオアンチゲンの発現を評価する。
予定よりも少ない試薬を用いて効率よく実験を遂行できたため、次年度使用額が生じた。消耗品費(抗体など)に充当する。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (23件) 産業財産権 (1件)
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