研究実績の概要 |
本研究は膠芽腫における低酸素領域の糖代謝に関して、臨床情報として術前に得られたPETによる腫瘍における生体内の代謝情報と、その摘出された検体における低酸素・糖代謝関連分子の発現に関して、その相関性を調べることが目的である。本研究の元になっているのは、低酸素内糖代謝の亢進が予後不良因子であることを見出した報告である(Toyonaga T, Yamaguchi S, et al. Eur J Nucl Med Mol Imaging, 2017)。 研究初年度にあたる令和4年度は、症例ごとのPET情報の半定量的な解析、症例データベースの構築、摘出検体からの核酸の抽出、低酸素マーカーや糖代謝関連分子の遺伝子発現解析のpreliminary studyの実施、腫瘍ごとの遺伝子発現の解析を行った。Preliminary studyにて糖代謝関連分子としてGLUT1, GLUT3, G6PC1, G6PC2, G6PC3, HK1, HK2, VEGF、PCNA などの遺伝子発現量を測定できるプラットホームを作成、対象となる33症例の腫瘍検体から抽出したmRNAを用いて、これらの遺伝子発現解析をおこない、分子Xを候補分子として同定した。この得られた遺伝子発現の結果をもとに、PET情報から得られた低酸素や糖代謝の半定量値との相関性に関して検証し、低酸素化における糖代謝亢進のメカニズムに関して鍵となる糖代謝関連分子の同定を行った。 さらに、候補分子Xの発現に関して、当院で治療された本研究対象以外の膠芽腫検体を用いて検証研究を行い、加えて公開されている膠芽腫の遺伝子発現のデータベース(TCGA)を利用し、候補分子の発現亢進と予後の関連性に関して検証した。
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