研究課題/領域番号 |
22K09235
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
野村 貞宏 山口大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (20343296)
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研究分担者 |
森山 博史 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (40816633)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | glymphatic pathway / amyloid beta / hydrocephalus |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病モデル動物を作成し、脳脊髄液の産生と吸収を促進することでアミロイドβの脳内貯留を抑制する研究を行っている。1年目の本年は脳室内に投与したアミロイドβが脳内に沈着することと、それによって認知機能が低下することを確認した。 Fluor 488色素で標識したAβ25-35をオスのC57BL6マウスの脳室内に定位的に注入した。Aβ25-35は海馬(CA-1、CA-2)、内包、脳室壁に主に沈着した。沈着部位だけでなく、細胞への取り込みを見るために、Fluoro Jade C染色を行った。変性した細胞が染色され、DAPIとマージして確認することができた。 同じくAβ25-35を注入したオスC57BL6マウスの神経学的評価を行った。注入から3週間後、これらの個体はSham手術群に比べてpassive avoidanceテストおよびY mazeテストにおいて有意な脳機能低下を示した。 Aβ25-35脳室内注入マウスは本来のアルツハイマー病モデルとは発生機序が異なる。すなわち本来のアルツハイマー病ではβアミロイドは脳から発生するのに対して、本モデルでは脳室内に投与したAβが脳内に拡散していくのを観察することになる。しかしながら脳内に注入したAβは均一に拡散せず、脳の機能障害も局所的なものになる可能性がある。これを考慮すると脳室内注入の方が優れたモデルである。また本研究の目的であるAβの排除試験にも有用であることから、2年目、3年目にも同じモデルを使用することにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目にアルツハイマーモデルを作成し、2年目にglymphatic pathway を流れる髄液を確認する方法を確立する。3年目にはこれらを組み合わせて、glymphatic pathwayを通ってβアミロイドが排泄され、作成したアルツハイマーモデルが髄液のturn overの促進によって改善することを確認するのが本研究のスケジュールである。1年目の目標は達成されたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目には脳内のglymphatic pathwayを確認し、その流れとともにAβが脳内から洗浄除去されているかを確認する。Aβを脳室内に注入するところは本来のAβ蓄積の機序とは異なるが、本研究の目的であるAβ排泄促進の可否は調べられる。glymphatic pathwayを通る脳脊髄液が脳圧や血圧によってどのように変化するか、変化するのは脳内へのinfluxか、脳内での拡散か、脳からのeffluxかがわかるであろう。 その次にはtransient receptor potential (TRP)の投与によって髄液産生が増えるか否か、glymphatic pathwayを流れる髄液量が増えるかどうか、それによって脳圧が変化するかどうか、さらに神経機能が改善ずるかどうかを確認する。 3年目にはマウスに脳室腹壁シャント術または脳室腹腔シャント術を行い、TRP投与と組み合わせて、髄液産生がさらに増加するかどうか、Aβの排泄がさらに促進されるかどうか、および神経機能がさらに改善するかどうかを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内の実験が無駄なく進んだため、実験に使用する消耗品の額が予定を下回った。来年度早期にこの残額で購入した消耗品を用いて実験を継続する予定である。
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