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2022 年度 実施状況報告書

SGLT2を標的とした脳梗塞後のペリサイト機能維持機構の探索

研究課題

研究課題/領域番号 22K09236
研究機関九州大学

研究代表者

中村 晋之  九州大学, 大学病院, 助教 (80713742)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードSGLT2阻害薬 / ペリサイト / 脳梗塞 / 組織修復 / 血液脳関門 / 虚血耐性
研究実績の概要

本研究課題は、糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬が、脳梗塞に伴うペリサイトや血液脳関門の障害を軽減し、脳梗塞による組織障害・機能障害を抑制できるのではないかとの仮説を立て、これを検証することが目的である。
まず、マウス脳梗塞モデルを用いた検討の結果、脳血管ペリサイトがSGLT2を発現し、さらに脳梗塞周囲で発現が増加することを見出した。さらに、SGLT2阻害薬を前投与し、脳梗塞を作製すると、梗塞サイズの縮小、血液脳関門破綻の軽減、神経症状の改善がみられた。その機序として、ペリサイトに対するSGLT2阻害薬の効果を検証したところ、SGLT2阻害薬の投与によってAMPKが活性化し、ミトコンドリア活性が上昇することを見出した。これにより虚血刺激に対する耐性を生じ、ペリサイトが脳梗塞後に残存しやすくなることが脳梗塞による組織傷害を軽減する機序と考えられた(Takashima, Nakamura et al. Commun Biol 2022)。
SGLT2阻害薬の投与はSGLT2を発現する全ての細胞に影響を及ぼすと考えられ、ペリサイト特異的なSGLT2の役割および薬理効果の明確な機序を示すには不十分である可能性がある。そこで現在、PDGFRβ陽性ペリサイト特異的にSGLT2をノックアウトしたコンディショナルノックアウト(cKO)マウス(Pdgfrb-P2A- CreERT2;Slc5a2fl/fl)を作製しているところである。今後、同マウスに対して脳梗塞を作製し、梗塞サイズ、BBB の破綻、神経症状、修復機構への影響などを解析する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1. 脳におけるSGLT2の発現および機能: マウス脳梗塞モデルを作製し、脳におけるSGLT2の発現を組織学的に解析した結果、脳血管ペリサイトにSGLT2が発現し、さらに脳梗塞によって梗塞周囲に発現が増加することを明らかにした。さらに培養細胞を用いた検討では、ペリサイトにSGLT2が発現することをmRNA・蛋白レベルで確認し、機能的にもNa依存性に糖を取り込むことを示した。
2. 脳梗塞モデルに対するSGLT2阻害薬の効果: 野性型マウスに対し、血糖に影響を与えない低濃度のSGLT2阻害薬を経口的に投与した後、脳梗塞モデルを作製した。その結果、梗塞サイズの縮小、血液脳関門破綻の軽減、神経症状の改善がみられた。その機序として、ペリサイトに対するSGLT2阻害薬の効果を検証したところ、SGLT2阻害薬の投与によってAMPKが活性化し、ミトコンドリア活性が上昇することを見出した。これにより虚血刺激に対する耐性を生じ、ペリサイトが脳梗塞後に残存しやすくなることが脳梗塞による組織傷害を軽減する機序と考えられた(Takashima, Nakamura et al. Commun Biol 2022)。
3. ペリサイト特異的SGLT2ノックアウトマウスの作製: SGLT2阻害薬の投与はSGLT2を発現する全ての細胞に影響を及ぼすと考えられ、ペリサイト特異的なSGLT2の役割および薬理効果の明確な機序を示すには不十分である可能性がある。そこで現在、 PDGFRβ陽性ペリサイト特異的にSGLT2をノックアウトしたコンディショナルノックアウト(cKO)マウス(Pdgfrb-P2A- CreERT2;Slc5a2fl/fl)の作製(交配)中である。

今後の研究の推進方策

脳血管障害は未だ死因の多くを占め、重度の障害により寝たきりとなり介護を必要とする最大の要因の一つであり、超高齢化社会において機能障害を回復させる治療の開発は喫緊の課題である。 近年の大規模臨床試験では、SGLT2阻害薬によって心血管死や心不全が有意に抑制され、さらには腎イベントの抑制効果も示唆されたことから、血糖降下作用以外による多彩な効果が期待され、「心・腎保護薬」と しての役割に注目が集まっている。しかし、脳梗塞に対しては、脱水を危惧し慎重に投与されてきた経緯から、SGLT2阻害薬の脳虚血病態における直接的 な作用についてはほとんど解明されていない。
ここまでの検討で、SGLT2阻害薬の前投与によって脳血管ペリサイトに虚血耐性をもたらし、組織傷害を軽減する可能性が示された。今後は、ペリサイト特異的SGLT2 cKOマウスを用いて、この機序を確固たるものとするとともに、臨床応用へ向けてのアプローチを進めて行く方針である。具体的には同マウスに対する脳梗塞を作製後、長期の神経学的機能予後、組織学的な影響について観察し、臨床データと突合していく。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Low-dose sodium-glucose cotransporter 2 inhibitor ameliorates ischemic brain injury in mice through pericyte protection without glucose-lowering effects2022

    • 著者名/発表者名
      Takashima Masamitsu、Nakamura Kuniyuki、Kiyohara Takuya、Wakisaka Yoshinobu、Hidaka Masaoki、Takaki Hayato、Yamanaka Kei、Shibahara Tomoya、Wakisaka Masanori、Ago Tetsuro、Kitazono Takanari
    • 雑誌名

      Communications Biology

      巻: 5 ページ: -

    • DOI

      10.1038/s42003-022-03605-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The presence of sodium glucose co-transporter 2 in mesangial cells and pericytes and its roles in mesangial lesions and in capillaries under diabetic and ischemic conditions2022

    • 著者名/発表者名
      Wakisaka Masanori、Nakamura Kuniyuki、Kitazono Takanari
    • 雑誌名

      Diabetes Research and Clinical Practice

      巻: 192 ページ: 110096~110096

    • DOI

      10.1016/j.diabres.2022.110096

    • 査読あり
  • [雑誌論文] PDGFRβ-positive cell-mediated post-stroke remodeling of fibronectin and laminin α2 for tissue repair and functional recovery2022

    • 著者名/発表者名
      Shibahara Tomoya、Nakamura Kuniyuki、Wakisaka Yoshinobu、Shijo Masahiro、Yamanaka Kei、Takashima Masamitsu、Takaki Hayato、Hidaka Masaoki、Kitazono Takanari、Ago Tetsuro
    • 雑誌名

      Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism

      巻: 43 ページ: 518~530

    • DOI

      10.1177/0271678X221145092

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Deletion of Nox4 enhances remyelination following cuprizone‐induced demyelination by increasing phagocytic capacity of microglia and macrophages in mice2022

    • 著者名/発表者名
      Yamanaka Kei、Nakamura Kuniyuki、Shibahara Tomoya、Takashima Masamitsu、Takaki Hayato、Hidaka Masaoki、Komori Motohiro、Yoshikawa Yoji、Wakisaka Yoshinobu、Ago Tetsuro、Kitazono Takanari
    • 雑誌名

      Glia

      巻: 71 ページ: 541~559

    • DOI

      10.1002/glia.24292

    • 査読あり
  • [学会発表] ペリサイトを標的とした脳梗塞治療戦略2023

    • 著者名/発表者名
      中村晋之、吾郷哲朗、高島正光、芝原友也、清原卓也、脇坂義信、北園孝成.
    • 学会等名
      第48回日本脳卒中学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 脳梗塞における糖代謝異常の病態と管理2023

    • 著者名/発表者名
      中村晋之、吾郷哲朗、清原卓也、松尾龍、脇坂義信、鴨打正浩、北園孝成.
    • 学会等名
      第48回日本脳卒中学会学術集会
    • 招待講演
  • [備考] 九州大学病態機能内科学脳循環代謝研究室

    • URL

      https://www.intmed2.med.kyushu-u.ac.jp/stroke/

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公開日: 2023-12-25  

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