研究課題/領域番号 |
22K09243
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
大場 茂生 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (80338061)
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研究分担者 |
平山 明由 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 准教授 (00572405)
常陸 圭介 藤田医科大学, 医科学研究センター, 講師 (10508469)
廣瀬 雄一 藤田医科大学, 医学部, 教授 (60218849)
山口 央輝 四日市看護医療大学, 看護医療学部, 准教授 (70319250)
寺西 隆雄 藤田医科大学, 医学部, 助教 (80899063)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 神経膠腫 / IDH変異 / がん代謝 / アスパラギン / グルタミン |
研究実績の概要 |
神経膠腫は悪性脳腫瘍の代表的疾患であり、変異型イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)を有するものと有さないものとに2分され、形態は類似していても遺伝学的・代謝学的背景は大きく異なる。本研究では、変異型IDHと野生型IDH神経膠腫モデルを用いて網羅的代謝解析を行い、それぞれのIDH型による代謝の違いを標的とした治療法を考案し、臨床応用へとつなげていくことを目的とした。 正常ヒトアストロサイト由来の不死化細胞に変異型IDHを導入させ腫瘍化させた変異型IDH神経膠腫モデルと、変異型Rasを導入した野生型IDH神経膠腫モデルを用いた、キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計での網羅的代謝解析の結果、野生型IDH神経膠腫モデルではアスパラギンが、変異型IDH神経膠腫モデルではグルタミン、グルタミン酸、グルタチオンが他者に比べてより低いことがわかった。また、実臨床でのmagnetic resonance spectroscopyを用いた解析でも同様の結果を得たことから、使用したモデルが有用であることが確認された。 作成したモデルを用いて、アスパラギンをアスパラギン酸へと変換させるL-asparaginaseの抗腫瘍効果を調べたところ、野生型IDHモデルにおいてより感受性が高かった。また抗腫瘍効果の機構としてオートファジーの関与が示唆された。他のIDH野生型の膠芽腫細胞株にても同一の機序で抗腫瘍効果を認めることが判明した。 次にグルタミン酸からα-ケトグルタル酸へと変換させるGLUD1の阻害剤を用いて抗腫瘍効果を調べたところ、IDH野生型に比べIDH変異型モデルにおいてより感受性が高かった。GLLUD1阻害剤はReactive Oxygen Speciesを増加させ、アポトーシスを誘導した。また、膠芽腫細胞株に変異型IDH1を導入した細胞に関しても同様の結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変異型IDH神経膠腫モデル、野生型IDH神経膠腫モデルそれぞれに対して標的となるがん代謝経路と、その経路を阻害することによる抗腫瘍効果の機構が同定できた。
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今後の研究の推進方策 |
ヌードマウスを用いたvivoにおける抗腫瘍効果を検証することと、実臨床で問題となっているテモゾロミド耐性となった腫瘍細胞における効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、他の助成金を獲得できたため。次年度使用額と2023年度の使用額は、今年度の予定であるマウスを用いた実験やテモゾロミド耐性株を用いた実験に使用予定である。
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