研究課題
脳神経外科手術において、最適な止血は安全性と信頼性をもたらし、手術成績を向上させる。これまで、人工脳脊髄液(aCSF)とその成分である炭酸水素ナトリウムは、血小板凝集を増幅させることで生理的止血を促進することが判明している。本研究では、抗血小板薬存在下で、aCSFが血小板依存性止血を増幅するかどうかを検証することを目的とした。全血を遠心分離して得られた血小板血漿(PRP)を調製したのちに、アスピリン(アセチルサリチル酸、ASA)または生理食塩水(NS)で洗浄した血小板を対象として、市販のaCSF溶液またはNSで処理したサンプルについて、凝集の増幅、インテグリンαIIbβ3の活性化、ホスファチジルセリン(PS)の露出、P-セレクチン(CD62P)の発現、マイクロパーティクル(MP)の生成について評価する。ASAまたはNSを注射したC57BL/6 Nマウスの尾部出血時間を測定することにより、ASA存在下でのin vivo止血に対するaCSFの影響を評価する。その結果から得られた知見をもとに、重炭酸ナトリウムによる止血機構を利用して、抗血小板薬服用下での開頭手術を可能にすべく重炭酸ナトリウムを含有した止血材料の開発を目標とする。
2: おおむね順調に進展している
いずれも実験の遂行は順調で、現在、炭酸水素ナトリウムを含む人工脳脊髄液に曝露された血小板は、生理食塩水に曝露された場合と比較してPS露出、MP放出、CD62P発現、インテグリンαIIbβ3活性化などの血小板活性化を回復させ、さらにアセチルサリチル酸暴露下であっても血小板凝集抑制を増幅させることが明らかとなり、炭酸水素ナトリウムがアスピリン存在下であっても、血小板凝集能を惹起することがわかり、結果が出始めている。
人工髄液下にASAを注射したマウスの切断尾からの出血時間を測定し、生理食塩水との比較検討する。得られたin vitroならびにin vivo試験の結果から、考察、論文化する予定である。
血小板凝集能検査を他機材で代替できたため
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Acta Neurochir (Wien) . 2023 May;165(5):1269-1276.
巻: May 165(5) ページ: 1269-1276
10.1007/s00701-022-05471-9.