研究課題/領域番号 |
22K09281
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
峰晴 陽平 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (50716602)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 髄芽腫 / RNF213 / miR-33a / 脂質代謝 / 免疫チェックポイント分子 |
研究実績の概要 |
Ptch1+/-; Rnf213-/-由来の髄芽腫とPtch1+/-; miR-33a由来の髄芽腫はともにSHH型髄芽腫において、脂質代謝因子をノックアウトしたモデルであり、Ptch1+/-単独のノックアウトマウス由来の髄芽腫と比べて、腫瘍の発生頻度、生着率、発育速度が上昇する。miR-33aをノックアウトすると、Rnf213の発現はほぼ消失する。腫瘍の無発症生存率はPtch1+/-; Rnf213-/-よりもPtch1+/-; miR-33a-/-で低く、採取した腫瘍のヌードマウスへの生着率や発育速度はほぼ同じである。一方で、Ptch1+/-; Rnf213-/-は、Ptch1+/-; miR-33a-/-よりも、野生型マウスでの増殖力は有意に高かった。両者の遺伝子発現を比較すると、Ptch1+/-; Rnf213-/-由来髄芽腫において、CD274(PD-L1)、CD38、CD88(C5ra-R1)が有意に高かった。これらはいずれも免疫チェックポイント分子であり、ヌードマウスでは同じスピードの発育が、野生型で異なるメカニズムの一つと考えられた。 マウス細胞株のin vitroでの発育が困難であるため、ヒト髄芽腫細胞DAOYの遺伝子改変を行った。DAOY細胞に比べて、RNF213をノックアウトしたDAOY細胞は、in vitroでの発育が遅延するが、in vivoではむしろ発育が促進された。In vitroでもserum starvationの状態にすると、RNF213ノックアウトの方が耐性を示し、環境に依存することが示された。GAS6の上昇が確認されたことから、GAS6をノックダウンするとstarvation耐性が失われた。GAS6はPD-L1発現を上昇させることから、虚血環境が抗腫瘍免疫にも影響すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの腫瘍細胞がin vitroで発育せず、試験管内の実験を進めることが困難であり、一部進行が遅れているが、一方で、代替する実験が進んだことから、総合的には、ほぼ予定通りの進捗ととらえられる。ヒト髄芽腫細胞DAOYを使って、RNF213をノックアウトした細胞を作成し、in vitroとin vivoの実験を行うことで、進捗の遅れを補っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、PD-1阻害薬やPD-L1阻害薬によって、腫瘍の発育が遅延するかどうかの実験を進める。その際に、Ptch1+/-; Rnf213-/-とPtch1+/-; miR-33a-/-由来腫瘍における腫瘍内の免疫細胞浸潤の違い、PD-1阻害薬の影響の違いを明らかにするため、免疫組織染色で腫瘍および腫瘍周囲や腫瘍内に浸潤する細胞の特徴を明らかにする。 RNF213ノックアウトDAOY細胞と、同細胞においてGAS6をノックダウンした細胞株を用いて、MHCIや免疫チェックポイント分子の発現の差を分析する。GAS6とPD-L1の関連性について確認し、GAS6がどのようにPD-L1の発現に影響するかを、AKTのリン酸化などのWestern blottingを通じて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス細胞が試験管内で育たず、ヒト細胞株の実験に切り替えたことから、予定の実験が行えなかったために残額が生じた。
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