研究課題
Ptch1+/-; Rnf213-/-由来の髄芽腫とPtch1+/-; miR-33a由来の髄芽腫はともにSHH型髄芽腫において、脂質代謝因子をノックアウトしたモデルであり、Ptch1+/-単独のノックアウトマウス由来の髄芽腫と比べて、腫瘍の発生頻度、生着率、発育速度が上昇する。腫瘍の無発症生存率はPtch1+/-; Rnf213-/-よりもPtch1+/-; miR-33a-/-で低く、採取した腫瘍のヌードマウスへの生着率や発育速度はほぼ同じである。一方で、Rnf213欠損腫瘍細胞株は、miR-33a欠損腫瘍細胞株よりも、野生型マウスでの増殖力は有意に高かった。両者の遺伝子発現を比較すると、Rnf213欠損細胞株において、CD274(PD-L1)、CD38、CD88(C5ra-R1)が有意に高かった。これらはいずれも免疫チェックポイント分子であり、ヌードマウスでは同じスピードの発育が、野生型で異なるメカニズムの一つと考えられた。ヒト髄芽腫細胞DAOYにおいて、RNF213をノックアウトすると、in vitroでの発育が遅延するが、in vivoではむしろ発育が促進された。In vitroでもserum starvationの状態にすると、RNF213ノックアウトの方が耐性を示し、環境に依存することが示された。GAS6の上昇が確認されたことから、GAS6をノックダウンするとstarvation耐性が失われた。GAS6はPD-L1発現を上昇させることから、虚血環境が抗腫瘍免疫にも影響すると考えられる。Rnf213欠損株においてGAS6をノックダウンして皮下に移植すると、発育が低下することから、免疫チェックポイント分子、虚血耐性因子の発現や免疫チェックポイント阻害薬の効果について実験を進めている。
3: やや遅れている
マウスの腫瘍細胞がin vitroで発育せず、試験管内の実験を進めることが困難であり、一部進行が遅れているが、一方で、代替する実験は予定以上に進めることができた。ヒト髄芽腫細胞DAOYを使って、RNF213をノックアウトした細胞を作成し、in vitroとin vivoの実験を行うことで、進捗の遅れを補っている。
GAS6をノックダウンした細胞株を樹立したので、皮下移植モデルを使って実験を進める。PD-1阻害薬等によって、腫瘍の発育が遅延するかどうかの実験を進める。その際に、Ptch1+/-; Rnf213-/-とPtch1+/-; miR-33a-/-由来腫瘍における腫瘍内の免疫細胞浸潤の違い、PD-1阻害薬の影響の違いを明らかにするため、免疫組織染色で腫瘍および腫瘍周囲や腫瘍内に浸潤する細胞の特徴を明らかにする。虚血と免疫細胞浸潤の関係についても分析を進める。虚血状態の部分とそうでない部分において、MHCIや免疫チェックポイント分子の発現の差を分析する。GAS6の発現の有無がどのように影響するかを分析する。GAS6とPD-L1の関連性について確認し、GAS6がどのようにPD-L1の発現に影響するかを、AKTのリン酸化などのWestern blottingを通じて検証する。
網羅的解析を次年度に予定しており、その分の費用を次年度に調整した。
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