研究課題/領域番号 |
22K09285
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
伊達 勲 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (70236785)
|
研究分担者 |
道上 宏之 岡山大学, 中性子医療研究センター, 准教授 (20572499)
藤井 謙太郎 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (40799318)
安原 隆雄 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (50457214)
平松 匡文 岡山大学, 大学病院, 助教 (50771953)
菱川 朋人 岡山大学, 医歯薬学域, 講師 (60509610)
春間 純 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (70875898)
田尻 直輝 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (80782119)
佐々木 達也 岡山大学, 大学病院, 助教 (80790865)
佐々田 晋 岡山大学, 大学病院, 助教 (80908088)
石田 穣治 岡山大学, 大学病院, 助教 (90771949)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 脳梗塞 / リハビリテーション / 電気刺激 / 細胞移植 |
研究実績の概要 |
脳梗塞モデル作製を行い、細胞移植を行うことはこれまで多年にわたり、教室で行ってきた。今回提案した研究において、カプセル化細胞移植と直接、生の細胞を移植する場合との治療効果の検討をまず行った。細胞としてはヒト骨髄由来多能性幹細胞を用いた。カプセルに封入しても、細胞は培養上も、長期間生存することを今回の研究でもまず証明した。続いて、カプセル化細胞移植を行い、1か月後にも生存細胞が存在することを確認した。直接細胞移植の場合には2週間で生存細胞がほとんど消失してしまうことと比べると、カプセル化細胞移植のメリットが確認された。治療効果としては、行動学的改善、組織学的改善(脳梗塞面積の縮小)が示された。ただ、カプセル化細胞移植群と直接細胞移植群では、行動学的評価や脳梗塞面積においては、有意な差が得られなかった。一方で、神経新生を評価したところ、移植部位に近い脳室下帯においては、神経新生の増強が、カプセル化細胞移植群で認められた。これは、カプセル化細胞移植群における細胞生存に関係すると考えられた。カプセル化細胞移植では、生存している細胞からの栄養因子などの周囲宿主組織への供給が最も重要な治療効果の源であり、細胞-細胞の直接の接触や新しいネットワーク形成とは関係しない。この研究結果から、本研究で用いられたヒト骨髄由来多能性幹細胞移植では、移植された細胞から分泌される栄養因子などによる治療効果が治療メカニズムの主体であると判断された。続いて、リハビリテーションも組み入れた治療研究を行っており、電気刺激についても様々な動物モデルを用いて研究を掘り下げている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、カプセル化細胞移植の研究について、深く掘り下げ、脳神経外科学会をはじめとする学会発表や、一流欧文誌に論文発表までこぎつけることができたことが一番の理由である。(Kawauchi S, et al. CNS Neurosci Ther 2022) 細胞移植の条件設定だけでなく、細胞移植の治療メカニズムに迫る報告ができた。 リハビリについては、ランニングホイールを用いた自発運動との組み合わせを検討しており、極めて重要なデータが複数得られている。 一方、電気刺激治療による細胞移植への影響については、まだ深く掘り下げられていない。しかしながら、特に脊髄刺激や迷走神経刺激の治療効果およびそのメカニズムについての研究が派生的に深化しており、その好影響から、細胞移植における電気刺激の意義についても、今後調べていくことができそうである。 学会発表や論文発表を多数行い、本補助をいただき、新しい知見を世の中に継続的に発信していき、最終的には研究目的に応えるデータを最終年にはお示ししたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的にはリハビリテーションの最適化研究を深化させたいと考えている。ランニングホイールを用いた自発運動に関しては、すでに良好なデータが得られ、リハビリテーションそのものの治療効果、細胞療法そのものの治療効果を上回る相乗効果が、細胞療法+リハビリテーションで得られることは間違いない。一方で、どのようなリハビリテーションをどの程度行うのが良いかについてはまだ調べられておらず、強制的な運動でリハビリテーションの負荷をしっかりとかけるべきかどうか ストレスはどの程度関与するか についてしっかり研究を進めたい。 電気刺激治療については、現在進めているパーキンソン病モデルに対する迷走神経刺激やてんかんモデルに対する脊髄刺激の研究を引き続き深化させて、可能であれば細胞療法との組み合わせで治療効果の増幅が得られないかを検討していきたい。 細胞療法を中枢神経系疾患に対する日常診療で用いる未来において、どのような併用療法が有効かを明らかにする努力を引き続き継続していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は、物品費(消耗品費)において、予定額よりも安価に購入ができたために次年度への使用額が生じた。繰越額は物品費(消耗品費)に引き続き充てる予定である。
|