研究課題
悪性神経膠腫(グリオーマ)は脳の正常組織に浸潤するため、外科的に全摘出を行うことが困難となり、局所および遠隔部位での再発例を多く認める。近年、がんの再発の原因として、がん幹細胞の存在が注目されている。がん幹細胞は自己複製能力が高く、抗癌剤などの治療抵抗性を有し、腫瘍形成能力を失わない細胞集団である。したがって、再発の根源であるがん幹細胞をターゲットとした治療法は有効であると考えられる。しかし、特異性の高いバイオマーカーや浸潤に関わる原因遺伝子は不明のままであり、さらなる詳細な研究が求められている。悪性神経膠腫のがん幹細胞は遺伝子発現プロファイルに基づき、4つのクラスタに分類されている。申請者らは、前神経系サブタイプの細胞において内向き整流Kチャネル機能が亢進し、間葉系サブタイプでは検出できないことを見いだしている。さらに、前神経系サブタイプのがん幹細胞において、内向き整流Kチャネルをコードする遺伝子であるKCNJ2,4,5,8,9,10,16のmRNAの発現を認めた。悪性神経膠腫のがん幹細胞において、KCNJ遺伝子が変異していると考えられるため、これらの分子について、点変異、融合遺伝子およびスプライシングバリアントが存在するか解析した。その結果、KCNJ10の6カ所で点変異を認めた。さらにKCNJ8とLRRC34P1の融合遺伝子を同定した。これらの変異はがん幹細胞の表現型に関わる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
グリオーマのがん細胞において、KCNJ8とLRRC34P1の融合遺伝子を同定した。
免疫染色法を用いて、KCNJ8がコードするタンパク質の発現を検証する。
予定よりも少ない試薬を用いて効率よく実験を遂行できたため、次年度使用額が生じた。消耗品費(免疫組織学用試薬)に充当する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (16件) 産業財産権 (1件)
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