研究課題
本課題では、我々が開発した3D MRI解析システムを用いた膝関節軟骨・半月板の定量評価を行い、変形性膝関節症(膝OA)の病態解明を行った。また、O脚(内反膝)による下肢アライメント異常は膝OAの主要な原因である。3DMRIによる軟骨の厚さや面積率との関連の報告はなく、本課題において下肢アライメント(weight bearing line ratio: WBLR、joint line convergence angle: JLCA)の関連を検証した。WBLRと脛骨軟骨の厚さは、4サブ領域で中等度の関連を認めた。JLCAと脛骨内側軟骨の厚さは、4サブ領域で中等度の、1サブ領域で弱い関連を認めた。軟骨の厚さとWBLRとJLCAのいずれも関連を認めた領域は前方外縁、前方中央、中央外縁、中央中央であった。これらのことから、膝OAにおける軟骨摩耗がこれらの領域から始まることが強く示唆されたことになる。また半月板逸脱が膝OAの発症および進行の重要な因子として近年注目されており、MRIにおける半月板逸脱と3DMRI解析における半月板が脛骨内側顆の関節軟骨を被覆する割合である半月板被覆率との関連について解析を行った。半月板被覆率は脛骨軟骨の厚さと4サブ領域で相関係数が0.4以上で中等度の、1サブ領域で相関係数が0.4未満の弱い関連を認めた。2Dでの半月板逸脱は脛骨軟骨の厚さと4サブ領域で相関係数が0.4以上で中等度の、2サブ領域で相関係数が0.4未満の弱い関連を認めた。軟骨の厚さと半月板被覆率、2Dでの半月板逸脱のいずれも関連を認めた領域は前方外縁、前方中央、中央外縁、中央中央であった。これら膝OAの病態を解明することは、新たな疾患修飾薬や手術治療の開発につながる重要な成果である。
2: おおむね順調に進展している
3D MRI解析システムを用いた膝関節軟骨・半月板の定量評価を、内側半月板損傷や高位脛骨骨切り術の対象となる変形性膝関節症患者50膝以上の解析を行っており、おおむね順調に研究を進めることができている。軟骨の厚さ、体積、軟骨面積率と関節鏡による軟骨スコアリングにおいて、大腿骨内側顆・脛骨内側顆のそれぞれ9つのサブ領域に区分して検討したところ、大腿骨内側顆では関節鏡では確認できない3つのサブ領域を除く6つのすべてのサブ領域において相関が認められた。脛骨内側顆では9つのサブ領域中5つのサブ領域において相関が認められた。特に脛骨側では、前方から中央の中央~外縁におけるサブ領域で相関が認められており、変形性膝関節症における軟骨摩耗がこの領域から始まることを証明することができた。本結果は国際英文誌において報告した。また、3DMRIによる軟骨の厚さ・面積率と下肢アライメントとの関連、軟骨の厚さ・面積率と3DMRI解析における半月板が脛骨内側顆の関節軟骨を被覆する割合である半月板被覆率との関連について解析できており、おおむね順調に研究を進めることができた。本結果は国際英文誌に投稿を完了しており、変形性膝関節症の病態解明に貢献することができた。
軟骨の厚さ・面積率と3DMRI解析における半月板が脛骨内側顆の関節軟骨を被覆する割合である半月板被覆率との関連について解析はできたが、さらに超音波における半月板逸脱の解析結果を加えての報告はない。今後は、超音波を用いた解析も追加することで、より簡便に変形性膝関節症の病態を把握し、臨床現場での診断に活用することができる。また、半月板逸脱に対する新たな治療法である鏡視下Centralization法は膝OAの予防効果が期待されるが、半月板逸脱抑制効果など、まだ不明な点も多い。Centralization法の有効性を3DMRI解析を用いて評価することにより、その効果を判定することができる。半月板逸脱の病態を解明することは、新たな疾患修飾薬や手術治療の開発につながるものである。
学会参加で計上していた旅費が、他の予算で執行できたため、次年度使用額が生じた。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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