研究課題/領域番号 |
22K09304
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三島 健一 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (40646519)
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研究分担者 |
鬼頭 浩史 あいち小児保健医療総合センター(臨床研究室), 臨床研究室, 副センター長 (40291174)
松下 雅樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (60721115)
神谷 庸成 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (50845542)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨壊死 / Runx2 / 骨形成促進薬 / de novo創薬 / ドッキングシミュレーション / 線維化 / TLR4拮抗薬 / IL-6 |
研究実績の概要 |
TLR4拮抗薬であるLPS-RSの虚血性骨壊死に対する効果を調べた。実験はマウスの大腿骨遠位顆部を栄養する主要な血管4本を顕微鏡にて同定し、これらをすべて凝固焼灼して虚血性骨壊死を誘導する動物モデルを使用して行った。 馴化した12週齢のC57BL/6雄マウスの左後肢に上記の手術操作を施し、術直後に1回、以降は週に2回(Day 0, 3, 7, 10, 14, 17, 21, 24)、LPS-RS 5 mg/kg (薬剤投与群)およびVehicle(対照群)の腹腔内投与を行った。 術後4週と6週時点での壊死骨端における骨梁内empty lacunaeの個数は薬剤群で有意に少なかった。壊死骨端内の破骨細胞数や海綿骨構造パラメータに有意差はみられなかった。壊死骨端内における術後2週時点でのTUNEL染色陽性細胞や術後2週や4週時点でのIL-6陽性細胞数は薬剤群の方が有意に少なかった。 Runx2の発現や転写活性化能を上昇させ、骨芽細胞分化や骨形成を促進させる化合物スクリーニングを開始した。ヒトRunx2遺伝子のP1プロモーター領域をサブクローニングしたルシフェラーゼベクターを安定発現する未分化間葉系細胞株を樹立し、薬効スクリーニングを行った。一次スクリーニングには名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所 (ITbM)から供与を受けた800種類の基本骨格化合物を使用した。2種類の化合物にランソプラゾールを上回る内因性Runx2遺伝子の発現上昇効果が確認された。この2種類の化合物の派生化合物20種類を対象にさらにスクリーニングを進めると、1種類は比較的低濃度でも薬効を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度当初は実験手技をサポートしてくれる実験助手や大学院生の確保および彼らの虚血性骨壊死モデルの習熟に時間がかかり、研究の進捗に少なからず影響した。動物モデルの再現性が向上した結果、TLR4拮抗薬単独の効果検証は進んだが、当初の予定である複数種の薬剤を投与する実験系は実施できていない。 派生低分子化合物の化学合成に時間を要したため一連のスクリーニングが停滞し、リード化合物の導出に至っていない。 壊死骨線維化領域のトランスクリプトーム解析・プロテオーム解析はいまだ着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
来期もマウス大腿骨顆部虚血性骨壊死モデルを使用し、TLR4拮抗薬単独あるいは水溶性ランソプラゾールとの併用投与による壊死骨の圧壊抑制効果を検証していく。今期の動物実験では、TLR4拮抗薬によって壊死骨端内の慢性炎症、骨細胞のアポトーシスが抑制されるという結果が得られたが、骨端の圧潰抑制効果までは確認できなかった。水溶性ランソプラゾール (8 mg/kg)の週3回尾静脈投与(1日1回)を行うと、壊死骨端の骨量や骨梁パラメータが有意に改善するという結果が出ているため、骨壊死誘導後3週までの早期にTLR4の全身投与を行い、その後水溶性ランソプラゾールに切り換えさらに3週間全身投与を行うという実験を計画している。 ヒット化合物のデータと既存の3種類のプロトンポンプ阻害薬とそれらのスルフィド体のデータを併せてドッキングシミュレーションを行い、作用点の絞り込みを進め、リード化合物の導出を目指す。 壊死骨端内線維化領域のトランスクリプトーム解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
今期は実験手技をサポートしてくれる実験助手や大学院生の確保および彼らの虚血性骨壊死モデルの習熟に時間がかかり、動物実験は3回しか実施できなかった。研究に必要な物品は過年度の研究期間中に揃えていたため、当初の計画よりも予算の使用額は少なくなり、次年度使用額が発生した。来期は動物実験の実施回数を増やし、費用が掛かる組織学的検査の外注費を計上する予定にしている。 Runx2活性化薬の創薬ではリード化合物のex vivo, in vivoでの効果検証を予定している。 壊死骨線維化領域のトランスクリプトーム解析を予定している。
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