研究課題/領域番号 |
22K09308
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
白石 大偉輔 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (70769512)
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研究分担者 |
菰原 義弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (40449921)
藤原 章雄 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (70452886)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨軟部肉腫 / 免疫微小環境 / 腫瘍関連マクロファージ |
研究実績の概要 |
近年、免疫療法の開発により悪性腫瘍に対する治療戦略が大きく変わりつつあるが肉腫の治療に関しては大きな変化はない。肉腫に対しては従来の外科的拡大切除が標準治療であるが、転移・再発症例における有効な治療法は確立されておらず、転移・再発の予防は重要な テーマである。本研究では、肉腫転移に関わる新たなメカニズムを探索するため、転移能 (+)株と転移能(-)株での比較を行うことで転移に関わる因子を探索する。特に免疫微小環境に影響を及ぼす因子に注目し、阻害療法を用いて肉腫細胞の転移・発育に関与する因子の探索を行うことで、肉腫における新たな診断マーカーや分子標的療法の臨床応用ヘの寄与を目指すことを目的とする。 本年度は、マウス肉腫細胞株LM8を用いて、5つのサブクローン株を調整し、それらのサブクローン株のうち2株は肺転移し3株は転移しなかったことから、2株の転移能(-)株と3株の転移能 (+)株の準備を整えた。これらの細胞株の基本的な遺伝子発現に関しては大部分が共通していると考えられ、一部の 遺伝子変異あるいは発現の違いが転移に関与していると考えられるため、それぞれのクローン細胞株の遺伝子発現の違いの比較を試みた。その結果、RNAシー クエンス解析により、転移や免疫微小環境における免疫抑制に関与する可能性の考えれる候補因子が数種類同定された。また、これらの候補分子については転移能(-)株と転移能 (+)株間におけるタンパクレベルでの違いも確認できたことから、これらの候補分子が肉腫転移に関わるメカニズムに関与している可能性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実験計画における大きな目標としては、肉腫転移に関わる新たなメカニズムを探索するため、転移能 (+)株と転移能(-)株での比較を行うことで転移に関わる候補因子を探索することであった。本年度は、マウス肉腫細胞株LM8を用いて5つのサブクローン株を調整し、その中から2種の転移能(-)株と3株の転移能 (+)株の準備を整え、それぞれのクローン細胞株の遺伝子発現の違いの比較を試みた。その結果、RNAシークエンス解析により、転移や免疫微小環境における免疫抑制に関与する可能性の考えれる候補因子(APOE, HLA-DRA, EIF6等)を数種類同定した。また、RNAシークエンス解析にて同定した候補分子については、タンパクレベルにおいても転移能(-)株と転移能 (+)株間での違いも確認できたことから、これらの候補分子が肉腫転移に関わる新たな機能分子である可能性を明らかとした。本計画の進捗度としては、計画に沿って順調に実施ており成果も出つつあることから、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、まずは転移能(-)株および転移能 (+)株を用いて、マクロファージやリンパ球など腫瘍微小環境中に存在する細胞と共培養し、その共培養条件において、前年度に候補因子として同定された因子の発現変動を解析する。また、転移能(-)株および転移能 (+)株をC3Hマウスの皮下に移植し、皮下腫瘍と肺転移病変における候補分子の発現を免疫染色やFACS, Western blotなどで確認する。つまり、肺転移能(+)株を移植した腫瘍に高発現する因子を選別することで肉腫転移に関わる候補因子の同定を試みる。本検討では原発巣と転移巣における比較も同時に行う共に、腫瘍微小環境における腫瘍細胞や免疫細胞(マクロファージ 、リンパ球等)と相互作用についても詳細に解析する。 本検討を行うことで、肉腫細胞の転移・発育に関与する因子の探索を行い、将来的に肉腫における新たな診断マーカーや分子標的療法の臨床応用ヘの寄与する基礎的知見を得ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 新型コロナウイルスの影響で、研究代表者が臨床業務を主に行わなければならなかったため、想定よりも研究時間を確保できず計画していた研究を行えなかったため次年度使用額が生じた。 (使用計画) 今後は、新型コロナウイルスの位置づけが「5類」に引き下げられることから研究時間を確保できるため、計画していた実験も着実に行えることから次年度の研究実施にあたって支障はない。
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