研究課題
慢性炎症の蓄積が加齢であるという”Inflammaging”の概念は、超高齢化社会の課題であるフレイルや運動器不安定症を解決する大きなヒントである。その開始点となるDAMPsの一員であるHMGB1とそのファミリー分子HMGB2の、骨芽細胞分化における役割解明を目的としている。そのために、骨芽細胞特異的に成獣期でコンディショナル(c)ノックアウト(KO)したダブルcKOマウスの作製に着手した。Hmgb1 cKOマウスとHmgb2 cKOマウスについては、いずれも5つのエクソンの内、エクソン2-4を欠損させる目的で、イントロン1と4にそれぞれCRISPR/Cas9システムでloxP配列を挿入したマウスを作製済み(Cyagen社)で、実際に当学の動物舎に導入を完了した。しかし、昨年度はほぼ1年間に渡って動物舎の改修工事が施行された為に、導入したcKOマウスは仮設動物舎における飼育となり、繁殖が行えず、また改修後の動物舎への移動においてクリーニングを必要とする為、精子の凍結保存として生体飼育も一旦閉じざるをえなかった。したがって、骨芽細胞特異的にcKOマウスを作製するためのCol1a1-Cre-ERTマウスも導入を見合わせた。Adult骨組織におけるHmgb1とHmgb2の発現分布に関してはよく分かっていなかったため、ラット成獣の肩関節やマウス成獣の脛骨の組織切片を作製し、免疫組織化学染色を行った。それぞれ骨芽細胞における蛋白発現を確認できた。また、ラット肩腱板損傷後関節症モデルの上腕骨頭においてもHMGB1の発現を強く認め、慢性炎症との関わりを強く示唆する結果であった。
3: やや遅れている
上述の様に、昨年度はほぼ1年間に渡って動物舎の改修工事が施行された為に、導入したcKOマウスは仮設動物舎における飼育となり、繁殖が行えず、また改修後の動物舎への移動においてクリーニングを必要とする為、精子の凍結保存として生体飼育も一旦閉じざるをえなかった。したがって、骨芽細胞特異的にcKOマウスを作製するためのCol1a1-Cre-ERTマウスも導入を見合わせていた。
新動物舎における動物の生体飼育開始は5月以降の予定であるが、再開し次第、Hmgb1、Hmgb2それぞれのflox/floxマウスを得るためのmatingを開始する。さらにHmgb1/Hmgb2ダブルflox/floxマウスの獲得を目指す。同時に、The Jackson Laboratory保有のB6.Cg-Tg(Col1a1-cre/ERT2)1Crm/J(購入済み)を導入する。適宜、上記flox/floxマウスと交配し、タモキシフェン投与によるcKOマウスを獲得し、その表現型解析を開始する。
次年度使用額は一定の試薬消耗品を購入するには少額であるため、次年度に合算して効率よく試薬等を購入する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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巻: 12 ページ: 11962
10.1038/s41598-022-16258-4
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