研究課題/領域番号 |
22K09318
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
石田 昌義 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (50643251)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 老化 / 骨粗鬆症 / 老化関連分泌因子 / 慢性炎症 |
研究実績の概要 |
加齢に伴い骨粗鬆症の罹患数が増加するが、その根本原因となる細胞・分子メカニズムはまだ不明である。細胞老化を起こした細胞からは、様々な液性因子が分泌されSenescence-associated secretory phenotype(SASP)と呼ばれる現象を起こす。このため、加齢とともに生体内に老化細胞が増えるとSASP 因子を介して慢性炎症や発がんが引き起こされていると考えられる。高齢者の骨組織中では老化細胞が蓄積し、SASPにより骨芽細胞分化を抑制することにより骨量減少が引き起こされるのではないかと仮説を立てて、実験を行った。 まず、マウス骨髄由来間葉系幹細胞株ST2細胞を55回以上繰り返し継代し、細胞老化を人為的に誘導した。継代過多(Late passage、 略してLP)-ST2細胞では、継代を重ねない(Early passage、 略してEP)-ST2細胞と比べてALP活性や石灰化能が低下していた。LP-ST2細胞の培養上清を介してWnt3aに対する骨芽細胞分化が強く抑制されていたことから、骨芽細胞分化を抑制する液性因子の探索をWnt/βカテニンシグナル阻害因子に絞り網羅的に解析したところ、Dkk1発現がEP-ST2細胞に比べて驚くほど高く増加していた。EP-ST2細胞にIFN-βを添加するとDkk1の発現上昇が観察されたことから、IFNがDkk1発現を誘導していることが示唆された。老齢マウスにおいても血中Dkk1量と骨組織中のDkk1陽性細胞数増加が若齢マウスに比べて顕著に増加していた。 以上より、細胞老化が引き起こされるとDkk1が分泌され、骨芽細胞分化を抑制していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞老化を誘導した間葉系幹細胞株を用いた試験管内での解析はほぼ終了し、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
試験管内での老化細胞を用いた解析は、ほぼ完了したので、今後は、老齢マウスや人為的に老化を誘導したマウスを用いたin vivoでの解析を推進する予定である。標的となる液性因子に対する中和抗体を入手し老齢マウスに投与した際の効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
骨芽細胞分化抑制作用を持つ分泌因子を特定後、中和抗体を探索し、中和抗体産生ハイブリドーマを入手した。入手先との研究試料の提供に関する覚書(MTA)締結と抗体精製業務を代行業者に外部委託するための契約手続きに時間を要している。 外部業者委託に必要な経費として確保しつつ研究に取り組んでいたために次年度に使用予定金額が生じた。
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